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『本村宮司の1万円札バラ撒いてみた!青森編~~~~~~~!!』 後ろにはどこかで見た施設が映っている。 『ここは核廃棄物最終処分場です!ここで空からお金撒きます!数千万円用意してあるので努力と運次第でつかみ取りです!あとこの施設は見学できますので予約してから寄ってみてください!!』 「何やってんだお前・・・」 「みんなここ知らないでしょ。国民に啓蒙してあげようと思って」 仮に知っていても関心はないだろう。県民も補助金が支給されれば文句は言わない。少数派が批判の声をあげていても誰も耳をかたむけない。斎藤もなんとなく名前は知っていたがそれくらいで興味はなかった。 勝手にビールを飲みながらMが画面を指差した。 「原子力発電所の使用済み核燃料がどうなっているか知ってる?ここに集められてんの」 『ただドローンでやるので上手くいかなかったら墜落します。たくさん飛ばしますがそれを見つければ一攫千金。日時はこの投稿時間から48時間後。だいたい二日後です。距離的に九州や関西の人は間に合わないと思うのでごめんなさい。次回は南のほうでやります。それではスタート!』 動画はそこで終わった。 「飲んだら?」 「俺のビールだ。お前こんな事して何が楽しいんだ」 「ゴミはゴミで対処するのさ。それだけ。Kはいつも国民に平和ボケから目を覚ますように行動しろって言われてるから、ここ選んでみた」 同じような事をKも言っていた気がする。 「ゴミがどうやって運ばれてくるかわかる?」 「トラックか何か・・・、てお前」 「俺元トラック運転手」 斎藤は言葉を失った。 「運搬中のトラックを乗っ取って突っ込むつもりか?」 「それも考えたことあるんだけど、貯蔵されているのは地下で吹き飛ばしても外に対して被害はそんなに及ばない。やるとしても命がけの自爆テロだ。失敗するのがわかっている事はしないよ。チームもかわいそうだし」 Mが初めて「チーム」と言った。単独犯の可能性はここで消してもいいだろう。 「お前のチームは何人構成だ」 「んー、数えたことないけど50人くらいはいる」 「正直に言え」 「ネット繋がりで、その作戦に見合った人を選んで実行するから顔も知らない奴ばっか。Kと同じく12人は俺と行動をともにしてる。例えばもしここを作戦通りトラックで突っ込むとしたら運転できる人を募集する。そんな感じ」 説明するのが面倒くさいのか淡々とMが言う。 Kとは毛色が違うな、そんな印象だった。二人が反発するのもわかる気がした。 顔も知らない奴に命をかける人間なんか存在するのだろうか。この日本で狂信的な思想を持っている者も今は少数だろう。 「金で人間は動く」 やっている事は異常で非現実的だが、その考え方は極めてドライで現実的な不思議な人格を持った殺人者、それがMだった。 「あとさ、ゴミって人間の事だからね」
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