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「お前な・・・」
「あはは、言えば怒ると思った」
1缶飲み終えたMはテーブルにそれを置いて
「ドローンから降ってくるのが札束ならいいね」
Mは眉間にしわをよせて、犯罪者の顔に戻して不敵に笑った。この動画を見た地元警察が機動隊を動員して施設を封鎖するだろう。そこに突っ込む愚行はしない。だからMは動かない。
動けないと表現したほうが正しいのか。
斎藤は警察官として全身を緊張させる。
「ここでお前は終わりだ。もう逃げる事はできない、諦めろ」
「別に逃げるつもりはないよ。ずっと俺の手でも握ってれば?でも捕まえる事はできない」
もう1本ちょうだいと言って2缶めを開けた。
「脳腫瘍があるんだろ。酒飲んでる場合か。逮捕は免れないが病院に行け。さっきから様子おかしいぞ」
その言葉が合図のようにMはビールを一気に飲み干した。病気の話になると態度が一変する。その話はするな、顔がそう言っていた。
「俺ってレイに似てる?」
「少しな」
Mはスマホのカメラ機能を反転させて自分の顔を写してじっと見つめた。
「拓海さんはこの顔が好きなんだ」
「・・・何が言いたい」
「似ていたら好きになってもらえるかなあって思ったんだけどさ。俺は誰にも愛されない」
その瞬間Mはスマホを力いっぱい壁に投げつけて画面が飛び散った。
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