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リーダーを失って残ったMチームがどう動くのか。Kはどこに潜伏しているのか。
謹慎中だが稲川や近藤と連絡を取りながら頭の中で情報を整理する。だがわかっている事は極端に少ない。
「今は事件から離れてゆっくりしてろ」
稲川にそう言われても気持ちは休んでいられなかった。少しずつ情報提供者も現れてきたが人間の記憶力は曖昧で、KやMにつながるものはなかった。
訓練されている警察官とは違って普通の人間が認識できる能力は極端に低い。防犯カメラもかなり精度は上がっているが、指名手配犯が映らなければ何の意味もない。
Kはわかったとしても彼女が従えているほかの人間たちについては全く情報がない。レイとKを含めて12人とすれば残り10人。Mは本人死亡で11人。それがどんな構成なのかわからなければ数を数えても特に意味はない。
なにより目的がわからなかった。
Kが「Mは暴力でこの世を破滅させる」と言っていたが、本当は彼女の目的なのではないか。
身内やまわりの人間関係、病気の悩みで暴走したMの行動原理は理解できる。遺族の方を思えばやり方は褒められたものではないが、ではKは?
斎藤は考えを一旦リセットしようと思い花とビールを買いに行った。テレビをつけてニュース番組をなんとなく見る。
2本目に手を伸ばした頃、民家が火事で全焼したというアナウンサーの声が静かに流れてきた。
視聴者提供の映像で見るそれは空を突き抜ける紅蓮の炎。
Mの実家だった。
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