64人が本棚に入れています
本棚に追加
/57ページ
近藤を通じて地元の消防に尋ねると、原因は放火のようだが火力が強すぎるということだった。
ピンポイントに爆撃されたような状況で遺体は損傷が激しく人間の形をかろうじて保っている状態だった。
DNA鑑定をしたいという口実でMの従兄弟に連絡を取ったが、彼はその時長距離の仕事で県外にいてすぐに戻れないということだった。
さりげなくアリバイを確認して彼を犯人からはずす。Mに『兄さん』と呼ばれていた青年は冷静だった。
「俺はあいつのように勇気ある人間じゃないんで」
謙虚にそう言った。ひそかに溜飲を下げたかどうかはわからない。
火事の原因が爆発物と聞いて思い浮かぶ人物が一人。
それは姿を現さないKだった。
だが全ては憶測でしかない。Mが自分の死後の行動をメンバーに指示していたのか。レイがKの行動を把握していたように。
闇サイトなどで募集されている犯罪に加担して報酬を得ようとする連中にもコンタクトを取ってみたが詐欺や運転の代行などが大半で、爆発物関連はほとんどない。
ただ一時期「M」と呼ばれる人物がここで同志を募集している時期があったことが掴めた。
顔も知らない50人程度の協力者をここで募っていたとしても素人集団を実際どう使うつもりだったのか。本人のパソコンには接触した形跡はなく履歴も復元して調べたが何も出て来ない。
50人のうち誰かを通じて連絡を取っていた可能性ならあるかもしれない。ふたつのチームは対立していたのでKが動く義理はない。
ネットに爆弾や毒物の作り方が載っているご時世だ。そこまで過激な事をしなくても逃走時の車の提供・運転やドローンの操縦などやろうと思えば簡単にできる。
Mのいう「金で人は動く」がここで繋がる。報酬さえよければ動く人間はいてそれを利用したにすぎない。
Mの死後作動するように仕掛けた復讐劇は、両親の爆殺という形で幕を開けた。
ただ、世界を破滅させるというMの誇大妄想を実現させるには駒が足りない。募った素人の同志ではなくプロが必要になってくる。成功報酬だけが目的の、金で動く精鋭。
それらを動かす第2のMが躍動を始めた気配を、斎藤ははまだ感じ取ることができなかった。
最初のコメントを投稿しよう!