鎮魂

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抵抗せず自供しているように見えるが肝心な事は決して言わない。 ほかの捜査官が来ると、ボールペンで手の甲を突いたり机を蹴り飛ばして暴れだす。取り押さえようとしても手がつけられず結局斎藤が呼ばれた。 斎藤は自分に向けられるレイの好意を最大限利用しようとした。 取調室では当たり障りのない事しか言わないレイの口を割るために、留置所の監視に金を握らせてレイの部屋に入っていく。 それが言い訳なのは自分が一番理解している。 横になっていたレイが驚いて起き上がるのを制して上に乗った。 「まだ尋問するの?ここで?」 「そうだよ。少しだけな」 両腕を拘束されたレイは次の展開を想像して 「さすがにこの方法はダメでしょ」 「嫌なら話せ。そうしたらすぐ帰る」 「知ってることはだいたい話したよ」 片手を離してレイの体を指でなぞっていく。弱い所を触れられると小さな吐息で鳴きながら体をよじった。 それがゾクゾクしてたまらない。 「殺した人間を食べて首を集めるのが趣味なんて嘘だろう。身元がはっきりしないように切り落とすことを教えられてそう装ったんだろ?」 「・・・うん」 斎藤はわざと刺激を求める所を避けてゆるゆるとさわりながら 「供述調書にはその事は伏せておいてやる。サイコパスなら死刑は免れると思うぞ」 だんだん思考力を奪いながら核心にせまった質問をする。 「でもここでは本当の事を話せ」 見回りが来る時間を見計らって斎藤は立ち上がった。 「明日も楽しみだな。取り調べ室では黙秘しても夜は話してくれ」 拘留期間は遊べるなと思いながらレイを見ると視線の定まらない目でぼんやり天井を眺めている。 振り返ると何故そんな事をしたのか自分でもわからなかった。 レイの魔力に捕まった。そして今もその呪縛から逃れられない。 「一目惚れだったのかな、俺たち」 感情に理由はないのだ。レイがいつも「わからない」と言っていた心境が今頃理解できた。
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