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「先生を・・・!」
斎藤はナースコールを押そうとしてその手を止めた。
「さっき来た医者はどこ行った?俺たちが部屋を出てからそんなに時間たってないぞ。犯人と鉢合わせしなかったのか?」
近藤は数人の部下を連れて警備室に走った。
急いで枕をどけると無表情な顔が見えた。一瞬の犯行だったのだろう。
裏切り者には容赦しないKの執念を思い出した。
Kの側近の身元はまだわかっていない。この前Kの後ろにいた影の誰かがここに来たにちがいない。
110で通報しながら近藤に続いた。
部下に病室を封鎖させながら警備室の防犯カメラ画面をチェックする。
「いた!」
斎藤が指差した画面に、白衣を脱ぎ捨て一般出入り口から足早に去る男の後ろ姿がはっきり確認できた。
「駐車場を封鎖できますか!?俺はこのまま追う。後まかせたぞ」
ほかの防犯カメラに切り替えて探すが妖しい人物は写らない。もし一般人が出入りする所から入ってきたのなら顔がわかる映像があるはずだ。服装と後ろ姿で探しているが今は顔がわかる画像が欲しい。
「この時間の分録画しておいてもらえますか」
パトカーの音を確認して近藤も外に出た。到着した応援に
「可能な限り出口を封鎖しろ!」
緊急車両が通る道は人員を派遣して後はパトカーで囲ませる。
斎藤はぐるりと辺りを見回した。
警察をぶつけてMチームを潰すことに成功してKは満足しているだろうと思っていたが完全に叩き潰すまでその追撃は続けるつもりなのか。
通知音が鳴るスマホを取り出しながら
「お前の目的は何だ」
『斎藤さんとお酒でも飲みたい所だけど忙しくてね』
憎いほど聞き続けたKの声だった。
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