憂鬱な午後

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憂鬱な午後

 目の前の秘書は震えてる。 「社長、申し訳ごさいません。私の不手際で、社長をお待たせすることになって…」  会議の出席者が遅れているのは目の前にいる秘書のせいではない。十分わかっている。いつもの俺なら、多少は他の出席者と雑談をして待ってる。  他の出席者も青ざめて下を向いている。 「クソっ…ゆずりはら…帰りやがって…」  今日何度目かわからない舌打ちをする。イライラが止まらない。  この世には、男女の性の他に、α、β、Ωという第2の性がある。  何事にも優れているα、平凡なβ、そして性に囚われるΩ。Ωには3か月に一度発情期があり、フェロモンを出し、αを誘う。Ωは男性でも妊娠できる。「性の奴隷」、そう蔑まされている。  俺は誘われれば抱いてきた。どの性だって。  Ωは発情期を使って俺を誘惑してきた。抱いてやったが、囚われることはない。  Ωは性欲を満たす道具でしかなかった。
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