憂鬱な午後

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 俺が不機嫌になった原因は自覚している。未婚率を改善しようと政府主催のパーティーがあり、出席は強制だった。欠席の場合は独身税を課すという脅しに負け、仕方なく出席した。  日曜日の午後という貴重な休暇の時間を使い、何も期待しないでパーティーに出席した。自分で言うのは何だか俺はもてる。28歳、α、アプリ制作会社社長、イケメン。モテる要素しかない。こんなパーティー、余計なお世話だ。  αは地味目のスーツ着用が指定されていて、Ωは政府が用意した白い服を着てる。  このパーティーでは名前や職業を明かすことは禁止されてている。素の自分で、ということらしい。何となく良さそうスーツの奴が多くて、それなりの家から集められてるんだと思う。まあ、結婚まで考えるなら、経済力は必要だろう。Ωも恐らく育ちがいいんだろう。本人たちが気に入っても周囲に反対されて結婚までたどり着かなかったら、未婚率は向上しないからな。  相手探しにギラギラした奴が多い中、料理をガツガツ食べてるΩがいる。俺は話しかけてくるΩを追い払って、はらぺこΩを観察する。  端から1品ずつ、全部食べるらしい。食べると満足そうに微笑む。また次の料理に手を伸ばす。  ついにデザートに辿りついて、スプーンで口に入れた。手が止まる。  泣いてる?…目をゴシゴシ擦ってる。立て続けに同じものを3個食べた。可愛いらしい様子に、声をかけたくなる。 「それ、美味しい?ローストビーフの方がいいんじゃないか?」  突然話しかけたから、びっくりしたみたいだ。切れ長で綺麗な目を見開いている。男なのに小さくて、細くて、肌が白い奴だ。まっすぐな艶のある黒髪で日本人形を想像させる。白いヒラヒラした服を着てるΩが多い中、白いスウェット上下だ。そんな服もあったんだ。
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