憂鬱な午後

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「今日、一番美味しかったのは、このプリンです。ほんのり塩味がして、懐かしい味で、感動しました」 「それで泣いてた?」 「えっ、見てたんですか…」  顔を赤らめてる。可愛い。連れて帰りたい。  この可愛いΩに、ちょっと意地悪をしたくて、ローストビーフを切ってたコックに言ってみる。参加者は食事より話に夢中だから、彼は暇そうだ。 「この子は、ローストビーフよりプリンが美味しいって言ってるけど、今日一番のおすすめは何?」 「少々お待ち下さい」  コックは調理スペースに戻ると、小さなコックを連れてくる。 「プリン担当の譲原(ゆずりはら)です。プリンを気に入っていただいてありがとうございました」 「本当に美味しいです。ほんのり塩が入ってて」 「だから、自信を持てって言っただろ。わかる人にはわかるんだ。ゆずのプリンはいい」  俺は完全部外者。可愛いΩと小さいコックは笑いあってる。ローストビーフのコックは持ち場に戻った。 「このホテルのティールームに置いてもらえるようになったんです。今度食べに来てください」 「はい。美味しいプリンをありがとうございました」 「お名前、教えてください」 「このパーティーでは名乗らないルールですから、耳貸してください」  可愛いΩは小さいコックの耳元で囁いてる。 「僕、帰らなきゃ。僕もゆずさんって呼んでいいですか?」 「いいですよ」 「ゆずさん、また来ます」  2人は笑い合って手を振り、可愛いΩは帰ろうとしてる。俺は完全無視。呆然としてるうちに本当に帰ってしまった。  シンデレラの王子を笑えない。一目で恋に落ちた。そして、帰る彼を引き止められなかった。  好きだという気持ちに浮かれてて、冷静にはなれない。あー、王子の気持ちがわかった。あんたをバカできない。 …………………………………………… 大変申し訳ありませんが、「運命の番から逃げろ!」の時系列を追い越してしまうため、しばらく更新をお休みします。
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