カミナリ小僧がやってきた

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 そういうわけで僕たちはフェスの会場にやってきた。お姉ちゃんに連れられて。本当なら僕のような子供は会場に入れないようだけど、お姉ちゃんが出演者の知人と言うこともあり特別に中に入れてくれた。 「多分、私の目当てのバンドはそろそろ出てるはずなんだけど……」  お姉ちゃんは腕時計を見ながら場内を歩いていく。あたりにはロックな音楽が大音量で流れていた。雨が降っているというのに観客たちはリズムに合わせて飛び跳ねている。そのうちにステージが見えてきた。四人組のバンドが演奏している。 「あ。あれよあれ。ボーカルが先輩の友達のお兄さん」 「と言うことは……」  言いながらカミナリ小僧へ視線を移す。彼は険しい眼差しでステージ上を見据えていた。 「いたぞ。あいつだ。よりにもよってあんな所で雷様の太鼓を叩いておる」  叩いてる?って、ステージ上で?もしかしてそれって…… 「なによ。太鼓ってドラムのことなの?」  お姉ちゃんの言葉にカミナリ小僧は怪訝な表情で、 「ドラム?なんだそれ」 「だから、あそこで叩いてるあれよ」とお姉ちゃんはステージ上のドラムを指差す。 「あれは雷様の太鼓だ」  やっぱり。まさか雷様の太鼓がドラムだったなんて。てっきり和風なものを想像していた。でもまあドラムも太鼓のうちの一つか。 「それにしたって、あんた達の探してる奴が同じバンドだなんて、偶然もいいとこね」  お姉ちゃんは呆れ顔でバンドの演奏を眺めている。 「あの人たちの演奏はいつ終わるの?」  終わってからカミナリ小僧の兄弟子に会いに行こうと思ったのだ。 「さあね。せいぜい2・3曲ってところだろうから10分ちょいじゃない。わかんないけど」 「だそうだよ。もう少し待ってみよう」  再びカミナリ小僧に目を向けると、彼はぶるぶると首を振って見せた。 「そんな悠長なことを言ってる場合ではないぞ」 「え?でもまだ演奏中だし」 「それがまずいのだ」 「まずいってなにが?」 「あんなめちゃくちゃな叩き方では、雷獣の怒りを買うではないか」 「ライジュウ?ってなに」  僕の疑問にカミナリ小僧は不安げに空を見上げつつ答える。 「雷の獣と書いて雷獣だ」 「それってピカチュ……」と言いかけるお姉ちゃんを無視して彼は説明を続ける。
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