カミナリ小僧がやってきた

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 彼は時々雲の上から抜け出していた。それは人間の世界でバンド活動をするためだった。見ての通りドラムの担当だったけど、どうしても雷様の太鼓でステージに立ちたくなった。でも弟子の身分で太鼓を叩くことなどできない。だから盗むしかなかった、と言うことらしい。  やれやれとため息を漏らした雷様はカミナリ小僧へ視線を移すと、 「それに引き換えお前はよくやった。後で褒美をやろう」 「そのことなのですが雷様。実は……」  彼は身振り手振りを交えて話している。そのうちに雷様が僕達のほうを見て、 「お前たち人間が太鼓探しを手伝ってくれたそうだな。礼を言うぞ。ちなみに名前はなんと申す」 「桑原佳祐です」 「桑原絵里です」 「ふむ……」と思案していた雷様は、 「ではお前たち。これより先、雷が鳴り出したらクワバラクワバラと唱えるがいい。そうすれば絶対にお前たちの近くに雷が落ちないようにしてやろう」 「クワバラ……」 「クワバラ……」  僕とおねえちゃんが顔を見合わせて呟いているうちに、雷様を乗せた雲はふわりと宙に舞い上がった。 「では、さらばだ」 「バイバイ。またな」  カミナリ小僧もそこにぴょんと飛び乗って僕たちに手を振った。  雲はあっという間に小さくなり、そして見えなくなった。  
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