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民間軍
社会がおおきく揺らぎ、混沌とした世界が訪れた。繰り返すことは二度とないと言われていた世界大戦が始まってしまったのだ。
ぼくは、過去の悲しさと怒りのはけ口を民間募集をはじめた軍の訓練へと向ける。更に3年がすぎようとしていた。
幸いにして親戚筋からの紹介もあり、ぼくは諜報部へと配属が決まる。
初めての軍の空気にこころは重かった。嫌気がさす毎日の中、何度もやめようと迷ったぐらいだった。だがやめたところでどこにも行くあてがない、と自分の血がそう叫んでいるようだった。
「どうだ、樫網! 軍に入って身も心も洗われた気がしないか?」
上官がしずかな口調でいった。
「はい、自分は肉親と呼べる家族を失くしましたが、今はあたらしい家族ができた想いであります」
「おおげさだな、お前は!」
大笑いする上官の顔は、子供の頃にみた父親そっくりだった。
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