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「愛香! 大丈夫か?」
玄関から、スマホの灯りを頼りに兄が入ってきた。
「お兄ちゃん‼︎ 」
私は半ベソで兄を呼ぶ。
「愛香、怖かったよな。
遅くなってごめん」
お兄ちゃんは、床に座り込んだ私の横に膝をついて私の肩をぎゅっと抱きしめてくれた。
「愛香、ろうそく点けるから、
ちょっと待てるか?」
お兄ちゃんが耳元で優しく囁く。
私は黙って頷いた。
お兄ちゃんは玄関に向かい、箱をぶら下げて戻ってきた。
「その箱…… 」
「この中にろうそくが入ってるはずだから」
お兄ちゃんはスマホの灯りを頼りに箱の側面を開け、テーブルの上にケーキを取り出した。
「クリスマスケーキ買ってきてくれたの?」
「愛香はケーキ好きだからな」
暗がりの中でも、お兄ちゃんが笑ったのが分かった。
お兄ちゃんは、引き出しから取り出したライターで5本のろうそくとサンタクロースの頭のてっぺんに火を点ける。
「ふふっ
サンタさん、チビになっちゃうよ?」
その光景に思わず笑みが溢れる。
「サンタは幸せを届けるのが仕事なんだから
いいんだよ。
サンタがチビになるおかげで、愛香が
笑顔になったし」
「ん… 」
お兄ちゃんが優しく頭を撫でてくれる。
いつもは向かい合わせに座るダイニングテーブル。
今日は、並んで座って、お兄ちゃんが手を握ってくれている。
お兄ちゃんがいるだけで、雷も怖くなくなるんだから、不思議。
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