クリスマスイブ

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愛香(まなか)、知ってるか?  停電、この一角だけなんだぞ」 お兄ちゃんが言った。 「嘘… 」 「嘘じゃないよ。  うちから北は停電だけど、南は点いてる」 お兄ちゃんがカーテンを開けて外を見せてくれた。 いつの間にか、雷の光は遠のいていた。 そして、目の前の通りの街灯は消えてるのに、向かいの公園の街灯はちゃんと点いている。 「ええ、ずるいよ〜」 お兄ちゃんと窓際に並んで、私が不平を漏らすと、 「送電線の系統が違うんだろうな」 そう言ったお兄ちゃんが私の肩を抱き寄せる。 ずっとこうしてたい。 お兄ちゃんの温もりに包まれて、そう思った。 「愛香… 」 お兄ちゃんが私の名を囁くように呼ぶと同時に肩を抱く手に力が入った気がした。 お兄ちゃん? 私が顔を上げると、公園の街灯の光の中に白いものが見えた。 「っ!!  お兄ちゃん!  雪!!」 黄色がかった光の中を、真っ白な雪がちらちらと揺らめいて落ちていく。 「綺麗〜」 感動して呟く私とは反対に、がっくりと項垂れる兄。 「ん? お兄ちゃん?  あ、ごめん。  私、なんか、話の腰を折っちゃった?  何?」 「いや、なんでもない」 兄は私の肩から手を下ろした。 「ええ!? 気になる〜!  教えてよ」 「ほんとに何でもないんだ」 兄は私の頭をくしゃくしゃと撫でて、ダイニングへと戻っていった。 お兄ちゃん? 何だったんだろう。 それから程なく通電して、いつもの我が家に戻った。 ローストチキンを改めて焼き直して、2人きりのクリスマスパーティーが始まる。 だけど、お兄ちゃんはさっき何を言おうとしてたのか、頑なに教えてはくれない。 何だったのかなぁ。 サンタさん、プレゼントはいらないから、私にお兄ちゃんをください。 ついでに、お兄ちゃんをお兄ちゃんじゃなくしてください。 って、無理かぁ。 どんなにいい子にしててもこればっかりはね。 ─── Fin. ───
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