夢喰い

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1 ある国の牢獄に鎖でつながれた一人の男がいた。 その男は左右にいる2人の男たちに拷問を受けていた。 「ぐあああああー!」 男の叫びがその空間中に響き渡る。 「さあ、もうそろそろはく気になっただろう?他の者たちのいる場所を  話してもらうか」 「・・・・断る!死んでもはくものか!」 「貴様ー!」 さらに拷問がつづく。傷だらけのその男は満身創痍だった。 そこに奥から一人の男が現れる。 「カンパスの酒場からさらに二人捕まったそうだ。」 それを聞いてピクリと目が動くしばられた男。 「ざんねんだったな。あんたが粘ったって俺たち国家軍が一人残らず ’夢喰い′どもを掃討される。あんたは別の目的でここにいるんだからな」 「処刑か、、、」 「勘がいいじゃないか。そうさ。あんたが死ねばさらにお前たちは弱体化  される。なあ、シャルロッテさんよ。」 シャルロッテとよばれたその男は、その男を睨んだ。 「おお!まだ、威勢がいいようだな。よし、お前らさらにあそんでやれ。  くれぐれも気をつけろよ。民衆の前で処刑までは間違っても殺すんじゃ  ないぞ」 そして、シャルロッテはさらに拷問を受ける。 そして、牢屋に戻されたシャルロッテは倒れて動けなかった。 (ああ、レビン、キリシア。すまない。  わたしのせいで死なせてしまった。どうか、神よ。彼らを安らかに  休ませてやってください。  私ももうじきそちらに行く身です。これまで人々の為に尽くしてきました  が力が及ばないばかりに多くの人を救えずに死なせてしまいました。  まだ、やるべきことがあるのにこのまま死ぬのは本望ではありません) シャルロッテは動けない体で神に祈り続けた。 「あんた、シャルロッテさんかい?」 シャルロッテは後ろから声がしたので振り返るとひとりの老人がいた。 「あなたは?」 「私かい。しがない老人さ。まさか、あんたのような大物に死ぬ前に会える  とはね。今日はどうやら運がいい。」 「私を知っているのですか?」 「ああ、あんたは有名人だからね。知らないやつのほうが少ないさ。」 シャルロッテは少し体が動けるようになったのでその場に座る。 「あなたのお名前は?」 「マルコだ。」 「マルコ。・・・まさか、発明家のマルコ様ですか?」 「ほう、私を知っているのか?」 「あなたこそ知らない人はいませんよ。なにせ、この国の文化に多くの影響を  与えた数多くの発明を残されたお方ですから。」 「ほほほ、そうか。私は有名か。しかし、今日はやはりいい日だ。  場所は牢屋だがここに二人の大物がめぐり合わせれたのだからな。」 「そうですね。私もそう思います。マルコ様。」 「しかし、お主がここにいるということだけは解せぬ。お主はまだ。    この世に必要だ。」 「ですが、どうやら私は命が短いようです。先ほど後日に処刑されると  聞きました。まだ、やり残したことが山ほどあるのですが。無念です。」 「諦めるのか?お主は夢追い人であろうが自分の生きたいという夢は追わない  のか?」 「そうしたいのですが、この状況は覆せないでしょ」 「それができるといったらどうする?」 「!!本当ですか!?」 マルコはある薬を出した。 「これだよ。」 「それは?」 マルコが持っていたのはみるからに毒物のような液体がはいった小瓶だった。 「これは私が前に発明した薬だ。これなら一時的に死人になれるぞ。」 「なぜそんなものを?」 「さあな、昔から色々研究・発明に明け暮れていたからな。理由は忘れ  た。だが、これならここから脱出できるだろう。このまま、逃げるのだ」 マルコに薬を渡されて小瓶を眺め決心する。 「マルコ様、ありがとうございます。使わせていただきます。  ですが、私はにげないつもりです。私の今の「夢」を叶えたらここへ戻って  きます。」 「?なぜだ?ここへ戻ってきてもみすみす殺されるだけだぞ?」 「私が逃げたからといって、今の弾圧が収まることはないでしょう。  むしろ今戦っている者たちが余計にきつい思いをさせてしまう。神の  与えし寿命です。しっかりと全うして死ぬなら本望です。」 「理解ができん。お主が抜け出し先導に立ち同士を引き入ればまた、  戦えるのではないか?そのために死ぬのなら私も今まで生きていたかい  があるというものだ。」 「確かに、私がまた先導に立てばまた戦えはするでしょう。ですが、私は  自分より未来に望みを託したいのです。」 「未来?」 「ええ、私は度のみち、このような体ですから」 シャルロッテはマルコに右足を見せた。 「これは!?」 「拷問でこの有様です。奴らは徹底して私と仲間をつぶしたいようです。  ですが、彼らも「夢」の本質を分かっている。だから、恐れてここまで  したのでしょう。」 「「夢」の本質?」 「ええ、それを今から未来へと紡いできます。そうすれば私が死んでも、    必ずやこの世を変えることができるはずです。それが、片足の先導者が  最後にできる。奉公です。」 「そうか、、、なら喜んでその薬を渡そう。わしもその未来見たかったのう」 「マルコ様は生きてください。あなたは未来にも必要な人だ。」 「私はよい。それこそわしもそろそろ寿命だよ。」 「マルコ様、、、、いや、あなたこそ生きてください!!きっと、生きて  下さい!!私が天に召した暁には、上からあなたの長寿を「夢」として  願い続けています!!」 「ありがとう。一番の先導者に死ぬまで祈り続けてもらえるとはありがたい。  本当にありがとう、、」 「当然です!あなたは死ぬ前に神が遣わしたお方です。感謝せずには」 「そろそろ行け。次の見回りが来る前に事を起こすぞ。」 「はい。」 シャルロッテはその薬を飲みほした。その瞬間、目の前がかすんで意識を 失い倒れる。 その姿を見てマルコは牢獄の兵を呼ぶ。 「大変じゃ、大変じゃ!人が倒れた!!」 いそいで兵がふたり現れる。 「どうしたのだ!!これは!」 その前にシャルロッテの亡骸が横たわっている。 「私が神の御祈りをしていたら、突然横で苦しみだして倒れたのだ。」 急いでカギを開け、生存確認をする。 「死んでいるぞ。死んでる!すぐにドルカス様を起こせ!!シャルロッテが  死んだ!」 もう一人の兵が兵長・ドルカスを呼びに行った。 それからはドルカス立ち合いの元再度死亡確認された。 「ふん、なんと哀れな最後よ。夢・希望を大いにかたるからこのようなことに    なるのだ。」 「ドルカス様どうされますか?」 「ふん!亡骸のこやつに興味はない。安置所へもっていき翌日に焼いてしまえ」 「はっ!」 こうして、シャルロッテは死体安置所へ移送された。 翌朝、死体の群れが大量にあるなかシャルロッテは目を覚ます。 夜明けの空を見ていた。山に近いこの場所はとても景色がよかった。 「本当に生きている、、、マルコ様に感謝だ。」 シャルロッテは体を起こすと目の前の光景に背筋を凍らせた。 「よし、見つかるうちに行こう。最後になすべき事をしてこの者と共に  天へ行くのだ。」 シャルロッテは木々を見つけ松葉づえにしてどこかへと歩いていった。 そして、シャルロッテの死体を朝夕監視しろとドルカスが命令をしていたため その夕方にはシャルロッテは生きているとドルカスに伝わり、兵士たちは 再び町々へと駆り出された。 シャルロッテは4日後、自ら国へと戻ってきて再び投獄された。 「なぜ、戻ってきたのだ。」 あまりの奇行にシャルロッテに問いただす。 「お前たちに言う必要ない。早く殺すがいい。」 「心配せずとも、翌日お前は死ぬ。逃げたことを知った王が見つかり次第  その翌日に殺せとおふれをだした。明日、公開処刑する。」 その日の夜、シャルロッテは牢屋の中で静かに祈っていた。 そして、翌日。 国の城下町の大広間に処刑場が設けられ公開処刑が行われる。 その場には大勢の観衆が集まり叫んでいる。そのさけびはシャルロッテの 存命を願う声であった。 「観衆どもめ、いつもなら全員殺すことろだが、今日はシャルロッテが死ぬ日  だ。大いに叫ぶがいい」 大勢の観衆を見てつぶやくドルカス。 そして、シャルロッテは処刑台に現れその中心に座らされ大刀を首元へあてら れる。 「これより!大虐罪人・シャルロッテの公開処刑を行う。  シャルロッテ執行前だ。何か言うことはあるか?特別に言わせてやる」 シャルロッテは一呼吸おいて口を開いた。 「夢想の力は無限だ。その力を使えばなんだってできる。    人を思うことも、人を愛すことも、時には自分を高めたり生きる力にだって    なりうるのだ。  私は今日ここで死ぬがあなた達の夢をずっと一緒に願っている。  夢を思うことは人の特権だ。誰にも否定する権利はない。  大いに夢を描け、そして大志を持ち良い世を夢想するのだ。」 その言葉は処刑場全体に響きわたった。 その言葉に観衆全員が泣き崩れた。この町では夢想は大罪。 泣くことでしかその言葉にかえすことができなかった。 それを理解しているシャルロッテはその後継を見て安堵する。 「あとは頼んだぞ。同志たち、、、」 大刀は多きく振りかぶられる。 「、、、、最後まで悪人だったな。逝け!」 そして、シャルロッテは晴天のなか天に召された。
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