散りゆく恋

2/2
前へ
/2ページ
次へ
学校から2つ目のバス停。弘毅のバス停。幸い、他に人はいない。私は自転車を邪魔にならないように隅に駐めた。弘毅のバスが来るまで、あと10分くらい。 『あのさ』 深呼吸をして、落ち着いて。泣いたり、ヒステリーを起こしたりしないように。 『うちら、別れようか?』 「は?」 言いたいことはいっぱいあるはずなのに、何て言ったらいいのか分からない。言葉が見つからない。 「え、マジで言ってんの?」 『うん、本気。大まじめだよ』 「...もしかして、さっきのあれ、本気にしてんの?」 弘毅の茶化すような言い草に、ますます気持ちが冷める。 『......』 「冗談に決まってんじゃん!」 弘毅をジロリと睨みつける。冗談だったら、何を言ってもいいワケ?冗談でも、人と一緒になって人をけなしていいワケがないじゃん!もし、周りに流されて人をけなしたのなら、意志が弱いってこと。私の中の彼は、「カノジョの陰口を言う男」。周りに流されて陰口を言うなんて、情けない。謝る気もなさそうだ。男としても人としても、サイテー! 『ふざけないで』 思いのほか、抑揚のない冷たい声が出た。冷たい空気が流れる。 キー 気まずい沈黙を破るように、バスが来た。 「それじゃーな」 彼は振り返ることもなく、手だけ振ってバスの中に消えて行った。私は、彼が乗ったバスとは反対方向へ自転車を走らせる。 空気の冷たさが沁みる。 ペダルが重い...
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加