01◆7月1日・はじまり

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受け取ったシエラを支えながらオーウェンは空いた腕で男の背中をバンバン叩いてホステスよろしく、エレベーターホールまで見送ってあげた。 叩いた本人は親愛のつもりだったが、豪快な挨拶に男はむせこんだせいなのか痛みのせいなのか瞳には涙を滲ませていた。 * 大男の周囲に香水のしっとりした香りが漂った。連れの女エルがうつ向くシエラを覗き込む。エルがこうして彼女を眺めるのは2度目だった。 相変わらず男のフリをしているようだが、ノーメイクにも関わらず整った、儚げな顔立ちをしている。 美人と言ってもよかったが、エルはそんな人物を、いやそれ以上の美貌の持ち主を仲間と暮らす屋敷内で毎日眺めていたので感覚が麻痺していた。 視線を移して彼女は同僚にまず瞳で訴える。保護したもののシエラの今後を決める時間だ。 「どうする?」 「どこか適当なホテルに監禁するか?それともアジトにご招待か?」 「手近に置いた方が安心よね。へたに動かれては仕事の邪魔だわ。隊長がどんな反応するかしらね」 エル28歳。年下の隊長の驚く顔を想像して大人の色気漂う微笑をクスと浮かべた。
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