私というもの。

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食べた茶碗を流しに運んで洗う。 手を拭いて振り向いて、食事中の家族に挨拶をする。 「行ってきます。」 「いってらっしゃい。」 「もう行くのか?」 「うん、月曜日だから…。」 ダイニングテーブルの下に置いていた鞄を取り、父親に返事をして廊下に向かう。 「お姉ちゃん!一緒に行こう?」 流しに茶碗を慌てて置いて薔子が言う。 聴こえるが聴こえない振りで廊下を進む。 「あぁ、良いよ薔子。時間がないならそのままで行きなさい!」 「うん…ごめんね?ありがとうお母さん。行って来ます。」 後ろから不快な会話が聞こえる。 玄関を開けて静かに閉める。 「ふぅ〜〜。」 ため息を吐いて歩き出す。 (あれが私だと…自分の茶碗を洗う僅かな時間位あるでしょ?それでも女の子なの?) と、言われるのだから堪らない。 母が言う事も正論だとは思う。 思うがその正論が相手によって変わる事が心がモヤモヤする理由で、子供の頃から何度も反抗したり話したりしたが、分かっては貰えない事ですっかり諦めてしまった。 母は昔から面倒事も人に会うのも嫌がる。 実家が裕福でお手伝いさんがいた所為かも知れないが、普通の会社員の父に嫁いだ事を時々、後悔する発言をする。 面倒な話は聞きたくない。 蝶子の不満も面倒な話なのだ。 聞くはずもなかった。 不機嫌な母がいる家は暗くなる。 だから家族は母の不機嫌スイッチを押さないようにビクビクしながら生活する。 元お嬢様でちやほやされて育っていて、子供が思う通りにならないのは許せないのだと思う。 思う通りに産まれて来なかった次女は、母の理想の娘からはかけ離れていて可愛くないのだと二十歳を過ぎた頃に分かった。

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