巳緒・1‐3

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 「で?巳緒、どうすんの?」  急に優茉があたしの方へ身を乗り出してくる。  「何を?彰を?」  「ちっがうよ!  告られたって人。  つきあうの?」  あたしは、冷めてしまったコーヒーを飲み下して話し出す。  「うーん…  優しい人だとは、思う。  本人も言うように、大事にしてくれるだろうなと感じられるし。  まだよく知らないけど、知れば好きになれるような気もする」  サークルの皆も言ってるように、イケメンだし…  だけど、何でそんな人があたしなんかと付き合いたいって言ってくれたのかが判らない!  真奈ちゃん先輩は「水野くん、やっと告ったの!」と驚いたように笑っていた。  「悪いけど、水野くんの気持ちに気づいてなかったのって、巳緒ちゃん本人と彰くんくらいのもんだと思うわ」  皆は結構以前から気づいていたらしい。  何だかなあ、それも恥ずかしいな。  「なぁんだ、もう巳緒の気持ちは固まってんじゃん」  優茉はつまらなそうに「巳緒もとうとう彼氏持ちかぁ」とぼやく。  「えっ」焦るあたしに、優茉は苦笑する。  「付き合ってみたいんでしょ、その先輩と」  う…そ、そうかも。    あたしは急にドキドキしてきた胸を押さえる。  そんなあたしを見て、何故か智香が大袈裟に嘆いた。  「あーあ。彰くん可哀相」」  「何でよ?」  「べーつにぃ。  だけどこれで、今まで彰くんに声をかけたくてもかけられなかった子たちが喜ぶね」    え?あたしがポカンとしていると、智香はパソコンの画面から顔をあげてあたしをちらっと横目で見る。  「巳緒は知らないだろうけど、彰くん結構女子に人気あるんだよ」  「へえー…」  奇特なお嬢さんたちもいるものだ。  「彰くんに彼女が出来たら、巳緒はどう思うんだろうね」  「どうって別に、何も変わらないよ」  「さあ、それはどうかな」    それきり二人は黙って作業に没頭し始め、あたしはスマホのLINEを起動した。  トークの一番上に彰の名前があるのを見て、何故か少し胸が痛む。    あいつ、ちゃんとレポートやったかな。
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