巳緒・1‐3

3/4
前へ
/229ページ
次へ
 しかし、今の二人との話で、あたしの心は一応、決まった。  どうなるか判らないけど、とりあえず水野さんと付き合ってみよう。  水野さんも最初は気軽にお試しでいいよって言ってくれたし。  あたしは水野さんのトーク画面を表示して、入力する。  『おはようございます。  今日、少しお時間もらえますか?』    すぐに既読がついて『今日は4限までだから、3時半なら大丈夫だよ』とレスポンスが来る。  慌てて『私も4限まで』と書いて送信すると、その場で既読になって『じゃあ3時半にカフェテリアで』と速攻返ってくる。  はやっ…  あたしは驚きながらスマホの画面を終了した。  彰なんて、既読スルーどころか未読でスルーしたりするからなあ。  水野さんって律儀な性格してるな…  昼に彰が大学に来たら、報告がてら言ってやろう。  ところがその日の2限が終わって、お昼になっても彰とは会えなかった。  3限・4限も同じ科目を取っていたので会えるかと思っていたのだけど、彰は現れなかった。  あたしは授業の終わった後、ぼんやりと歩いている伊藤くんを捕まえて彰がレポートを提出しに来たか訊いた。  「ああ…来たよ。  でもなんか、具合が悪いとか言ってすぐに帰った」  伊藤くんはそう言って大欠伸すると「悪い…俺も昨日、レポートで徹夜して眠くって…帰るわ」と言って背を向けてまたぼーっとした様子で歩いて行った。  えー…具合が悪いって…朝、そんなこと言ってなかったのに。  やっぱりあの古そうな牛乳がまずかったかなあ。  あたしは心配になって彰にLINEを送ってみる。  『伊藤くんから、彰が具合悪いって聞いた。  どうしたの、お腹壊した?』    珍しくすぐに既読になったけど、待っても待っても返事が来ない。  業を煮やして『病院行くくらい悪いの?市販薬なら、TV台の下の引き出しに入ってるよ!』と送ると、『オカンww』と一言返ってきた。  こっの…  あたしはカッとしてLINEを閉じる。  もう、心配なんてしてやらないんだから!
/229ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加