巳緒・1‐3

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 彰からのメッセージを待っていたりしたお陰で、水野さんとの約束の時間に少し遅れてしまった。  まったく、あいつが絡むといつもロクなことがない!  あたしは広いキャンパスを走って、カフェテリアに入る。  窓際の席で水野さんが手を挙げるのが見えて、あたしは息を切らしながら近づいて行った。  「すみません、お待たせしちゃって…」  謝ると、水野さんは「そんなに急いで来なくても大丈夫だよ、授業が長引いた?」と穏やかに笑って、隣の椅子を引いてくれる。  「いえ、彰が授業に来なかったので、心配でLINEしてて…」  椅子に腰かけて小さなタオルで汗を拭き、大きく息を吐く。    「え…彰くん、体調悪いの?」  「さあ。大丈夫なんじゃないですか。  人をコケにする元気はあるみたいだし」  さっきの小バカにしたようなLINEのメッセージを思い出して、あたしはムカつきながらそっけなく返事した。  水野さんは苦笑して「…で?巳緒ちゃんの話って?」と眼鏡の奥の瞳を笑わせて、あたしの顔を覗き込む。  あ…そうだった。  バカ彰のせいで、すっかり忘れてた。  あたしは水野さんの方に身体を向け、その途端に心臓がバクバク打ち出すのを感じて、思わず下を向く。  いいんだよね…?あたし。  言っちゃって。  あたしは顔をあげて水野さんの優しく微笑む理知的な顔を見る。  思い切って口を開いた。  「あの、先日の話のお返事なんですけど…  あたしで、良ければ、あの、お付き合い…」  なんだかしどろもどろになってしまう。  うわ、恥ずかしい…  「えっホント?!  付き合ってくれるの?」  水野さんは嬉しそうに笑って手を伸ばし、あたしの目にかかる前髪を除けながら訊いてくる。    「あ、はい、あの、水野さんのことまだよく知らないし、すごく悩んだんですけど…」  「それはこれから、ゆっくり知ってもらえばいいよ。  そこは全然、急いでない」  水野さんのほっとしたような笑顔を見て、あたしは喜んでもらえたみたいで良かったな、と思っていた。
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