彰(あきら)・1‐1

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 溺れる夢を見て目が覚めた。    慌てて身を起こすと、便器が見える。  うわー…  俺は水を流すと、シャワーを浴びて部屋に戻った。  酒、抜けねえ…  20歳になったばかりなのに、どうなんだこの自堕落な生活。  俺、こんなんで良いんだろうか。  智香ちゃんから、巳緒が告られたって聞いたとき。  一瞬、ショックだった。  何故かはわからないけど。  巳緒を好きになる、男がいるんだって知って。  そんで、巳緒がOKしたって知った時は、ほんの少し胸が痛んだ。  きっと寂しかったんだろうと思う。  いつも俺たち、一緒だったから。  だけどその後、それすごく良いじゃんって思った。  遊ぶ仲間が増えた、楽しみだなあと。  悪友の巳緒の彼氏なら、俺にだって友達だ。  でも…そんな簡単なもんじゃないんだよな。  俺は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、ペットボトルに直接口をつけて飲む。  巳緒が来てくれなくなってから、この部屋もキッチンも荒れ放題だ。  否、巳緒は今まで通り来てくれようとしているんだけど、俺が来させない。  部屋に()れない。  巳緒と話をしようとすると、巳緒の頭越しに彼氏の顔がちらつくような気がして言いたいことが言えない。  知っている人だからなのかな。  俺自身は水野さんのことは特に好きでも嫌いでもないんだけど。  はっきりした理由がある訳じゃない。  だから余計にモヤモヤするんだろう。  以前みたいに何でも話したいと思っているのに…    俺は大きくため息を吐くと、大学に行く準備を始めた。
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