巳緒・11-2

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 あたしや彰が気づくくらいだから他の友人たちも当然知っていて、たまに冗談ぽく訊かれたりするけど、智香がどう思ってるのかなんてそんなことあたしに解るはずがない。  だいたい、智香という子はあまり本心を見せない。  何か思うことがあってもじっと心の(うち)に秘めていて、表向きは普段と変わらない明るいキャラクターを演じている。    彰とあたしについて、互いに彼氏彼女ができた時にはよく思っていなかったようだった。  あたしにも彰に対しても何となくよそよそしくなって、あたしは少なからずショックだった。  いつも笑ってあたしのことを受け入れてくれると思ってたのに。  だから、あたしも彰もまた独り身になり、授業中もくだらないことで言い争いをするような日常が戻ってきて、智香と伊藤くんとまた親しく話をするようになって本当に嬉しかった。    智香に伊藤くんのことどう思ってるか訊いて、見事にはぐらかされた日の夜、彰からLINEが入った。  夏のバイト料がたくさん入ったからあたしを遊びに誘おうと思ってたけど、智香と伊藤くんも一緒に4人でどこかへ行かないか?と。    えーっ彰があたしを誘うなんてビックリ。  あたしはスマホを持ったまましばらく固まってしまった。    いや4人でか。  智香と伊藤くんと一緒か。  二人で行きたかったな。    なんて考えてぼーっとしてしまい、はっと気づいてあたしは慌てて返事を入力した。    『そうね。  4人で大学の外で会うことも遊びに行くこともなかなかないしね。  誘ってみようか。あたしは智香に声かけてみる。  彰は伊藤くんにお願い』  返信してから智香のLINEトークを呼び出しながら、どこへ行こうと考えていた。  急速に気分が上がってくる。  
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