彰・11-1

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 リゾートラインを降りてディズニーシーの前に着くと、俺は伊藤にLINEした。  伊藤が寝坊して今やっと智香ちゃんと合流したとのことで、1時間くらいかかるとメッセージが来た。  まったく何やってんだあいつはもう…  チケットを先に渡しといてよかった。  俺は巳緒とさっさと入園の列に並び、やがて開園時間になって中に入り、トイマニに並ぶため走り出す。  その後二人となんとか合流し、朝ご飯を食べていないという今泉のために皆でマンマ・ビスコッティーズ・ベーカリーに行った。    テラス席で風が吹き抜けてとても気持ちよく、平謝りの伊藤におごらせて今日の予定を話す。  俺や巳緒が行きたいところと、智香ちゃんと伊藤のプランは見事にミスマッチだった。  まあ、巳緒がそういうふうに仕組んだんだろうけど。  いくつかのアトラクションは一緒に回ることにし、LINEで随時連絡を取りながら基本的に別行動ということにした。  その時、伊藤がふと巳緒に目を留めて言った。  「あれ?巳緒ちゃんのペンダント、どこかで…  あっ!彰のストラップと同じ?」  「あ、彰が夏合宿で…」  と言いかけて巳緒は赤くなってしまった。  伊藤は驚いたように  「え?訊いちゃいけなかった?」  と言って智香ちゃんに  「もー、デリカシーなぁい!」  と怒られている。    「たまたま巳緒に似合いそうなペンダントがあって、それがストラップとペアだっただけ」  俺は何げなく言う。だって本当だし。  そりゃ、全然下心がなかったわけじゃないけど…    「ストラップごとあげてもよかったんじゃ…」  と伊藤が言いかけ  「まあいいか。でもペアっていいな。  智香、俺たちも何か買おうか?」  智香ちゃんに訊く。  「うーん、どうしようか…」  智香ちゃんは苦笑して首を傾げた。  ああ、嫌なんだな。  俺と巳緒は顔を見合わせて苦笑いした。    伊藤は目に見えてヘコんだ。  可哀相なヤツ。    ゴンドラに乗るという智香ちゃんと伊藤と別れて、巳緒と俺はタワー・オブ・テラに向かった。  智香ちゃんはあまり激しい動きのあるようなアトラクションには興味がないようで、どちらかと言えば俺たち寄りの伊藤は残念がっていたが、それでも智香ちゃんとショー系のものを見て歩くというのがなんかいじらしい。  巳緒はあちらこちらと俺を引っ張りまわし、すごく楽しそうだった。  最近、塞ぎがちな気分も上がっているようで、俺は秘かにグッジョブ俺!と自賛していた。  俺はかなり無理矢理な感じで、巳緒と自撮りのツーショットを撮って歩いた。
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