彰・11-2

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 なかなか時間が合わず、伊藤と智香ちゃんに次に合流できたのは、もう薄暮の頃だった。  マーメイドラグーンとアラビアンコーストを繋ぐ橋の上にいると言われて、俺と巳緒はその場所に向かった。  ライトアップが始まって一気に幻想的な雰囲気になった園内を、俺は巳緒の手を取って混雑を避けながら歩いた。  「見つかるかな」  巳緒が言う。  確かにすごい混雑だ。  「まあ、場所は解ってるんだし、向こうだって気をつけて探してるだろ…  おっ」  俺は2人を見つけて、思わず立ちどまった。  橋の上でキスしている2人が黄昏の淡い光と、ライトアップにシルエットになって浮かび上がる。    こんなところで堂々と…  声かけられないぞ。  巳緒も気づいたらしく、俺たちはなんとなくオブジェの陰に隠れた。  「どうしよう…」  巳緒が俺の顔を見る。  どうしようって言われても。  俺はスマホを取り出して、カメラを起動しズームして2人を撮った。  「彰っ」  巳緒が驚いたように制止する。  「だってなんか、すごくいい感じじゃん。  恋人オーラっての?気持ちが溢れてて」  「…そうだね…」  巳緒も2人を見つめている。  ふいに、その瞳から涙が零れて、俺は驚いた。  「どうした?」  と顔を覗き込む。  巳緒は口許を手で押さえて、嗚咽しそうなのを堪えている。  「好きだったら、自然とああいうふうにキスしたくなるんだよね、きっと。  あたしには、溢れる気持ちは無かったなあと思って。  水野さんに申し訳なかったなって…」  俺は黙って巳緒を抱きしめた。  巳緒は俺の胸に額を押しあてて嗚咽している。  巳緒のこの、深い心の傷が癒えるのはいったいいつになるんだろう。  巳緒に誰か好きな人が現れるまで、俺は誰も好きになれない気がする…
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