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朝8時。
あたしは彰の部屋のドアをガンガン殴り、脚で蹴っ飛ばしている。
「あきら~!!起きろこら~!」
「…んだぁぁ~ この山ザル女ぁ~」
と寝起きの彰がだらしないスウェット姿でドアを開ける。
あたしはドアを抑えている彰の腕をくぐり、さっさと部屋の中に入った。
「彰が来いって言ったんでしょ?何回電話したと思ってんのよ」
「だからってさぁ…ご近所迷惑でしょー」
「その言葉、あんたの口からだけは聞きたくないわ…」
とあたしは、昨夜の酒盛りの痕跡が色濃く残る、ぶっ散らかった部屋を見まわして言った。
さて、どこから片付けよう。
「おっしゃる通りでありんす…」と彰は大あくびしてトイレに消えた。
あたしは大きなゴミ袋を探してきて、とりあえずゴミ捨てにかかる。
床に投げ捨ててあるスマホが、着信があったことを示す点滅を続けている。
「ちょっと彰!これサイレントなってんじゃん!どーりで出ないわけだわ」
「えー?そう?おっかしいなぁ。今日のレポート絶対だから起きなくちゃと思ってアラームかけといたんだけどねー」
「アラームごと音消してどうすんのよ。ってか、レポート間に合うの?!」
とゴミを片っ端から袋に投げ入れながら言うと、彰はタオルで手を拭きながら現れゴマすりの真似をする。
「いやぁ~だからそれは、巳緒さまのお力で…」
「リミット今日の二限だよ?!」とあたしが悲鳴みたいな声で訊くと
「あー、なんかお前は昼まででいいからとにかく出せって池田先生に言われた~」
とまだ寝ているような声で返す。
先生も、落第させないように必死だなあ…
大変だこういう学生がいると。
あたしは池田先生に同情した。
「先生も大変だよね、あんたみたいな学生がいると。
落っことしちゃえばいいのに」
「今川とか伊藤だってそうだもん。
俺だけじゃないもんね~~」
彰はしゃらっと嘯く。
イラっとするわ、こういう不真面目なやつ。
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