巳緒・彰 12-2

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 え?誰?  と、伊藤と智香はなぜか巳緒を見る。  巳緒は「彰の、彼女」と小声で言った。  えっ、と驚いて顔を見合わせる伊藤と智香を横目に、巳緒は詩織を見つめている彰の緊張した横顔を見遣った。  LINEをブロックされたと言ってた。  もう、連絡が取れないと。  だから、水野が巳緒の部屋に来た日に会うはずの約束を、すっぽかして以来のはずだ。    巳緒の心は心配と不安でいっぱいになった。  詩織ちゃんは彰に何を言うつもりなんだろう。  彰は、…詩織ちゃんにどう話すんだろう。  彰は駆けてくる詩織を見つめながらも、巳緒がじっと自分を見ているのを感じていた。  巳緒の前で愁嘆場は避けたい。  だけど…    彰はぐっと奥歯を噛みしめる。  今は、巳緒に助けてほしい。  俺に勇気を与えてくれ。  彰は立ち上がり、それにつられるように、他の3人も立ち上がった。  智香と伊藤が手を取り合ってそろそろと離れていく。  少し離れたベンチに座って、成り行きを見守るつもりのようだ。  詩織が彰の目の前に来る直前に、巳緒もはっとしたようにその場から離れようとした。  その巳緒の手を、彰の左手がぱっとつかむ。  びくっとしてつかまれた腕を引こうとする巳緒に、彰は詩織の方を見たまま「ここにいて頼む」と低く言った。  巳緒は驚いて彰の横顔を見つめた。  自分が水野と話し合いの約束をした日、彰に近くにいて欲しいと強く望んだことを思い出した。  そして、彰が汗だくで部屋に飛び込んできてくれた時、自分の心も身体もどれほど救われたかも。  巳緒は覚悟を決めて、彰に手をつかまれたままその場に留まった。
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