彰・1‐3

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 捨てるのが面倒で置きっぱなしになっている、古いパソコンを起動してみる。  あ…動いた。良かった。  先輩に借金のカタに取り上げられた俺のパソコンは今何処…  なんて考えてもしょうがない。  このパソコン、貰っちゃおうかなあ。    ふう、と大きく息を吐いてテキストをリュックから取り出して広げる。  部室(ここ)はWI-FIが入りにくいので、USBをつないでデータを呼び出し、レポートを作成する。  しばらく没頭していると、誰かが入ってきた気配がした。  顔をあげると驚いて口を開けたまんまの巳緒がいた。  「あ…入っていい?」  とか訊いてくる。  なんだか久しぶりにまともに見る、巳緒の顔。  「別に、俺のもんじゃないし」  うわ。俺、素直じゃない。  巳緒はおずおずといったように入って来ると、俺の向かいの椅子に腰かけた。  「それ、さっきの授業のレポート…?」  「そうだけど」  「・・・・・・・」  巳緒が絶句しているのが判る。  何だよ、失礼な奴だな。  「そっちこそなんだよ、2限の授業でなくて良いのか?」  「伊藤くんと高木くんに頼まれて…  レポートの資料を」  手に持っていたコピーの束を持ち上げて見せる。  「あいつら…  俺から巳緒のノート借りられなくなったからって、直訴したのか」  ずるい。  後で伊藤から借りよう。      
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