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「巳緒もさあ、お人好し過ぎるだろ。
授業サボってまでやってやらなくても…」
「先生の都合で、突然休講になったのよ」
巳緒はコピーに目を走らせ、マーカーでアンダーラインを引いていく。
羨ましい。
つい、目で追っていると、巳緒は俺の視線に気づいてため息をつき、一番上の紙を「…見る?」と差し出してきた。
俺は恥も外聞もなく受け取る。
有難い。
巳緒はくすっと笑った。
「さっき智香から聞いた。
彼女ができたんだって?」
巳緒はまた次の紙にマーカーを引きながら、何げないふうに言った。
「そうなんだよ〜」
嬉しくてヘラヘラ笑ってしまった。
巳緒は呆れたように俺を見て「昨日、教室に来てた娘?」と訊く。
「いや、あの娘は彼女の友達。俺を呼び出しただけ」
大谷さんの親友なんだって。昨夜聞いた。
「ふうん。まあ、良かったね。
部屋ちゃんと片付けるんだよ。
あんなの見せたら嫌われるよ」
「また始まったよ、 巳緒のお節介。
わぁってるよオカン」
「その失礼な物言いやめてくれる?
19歳の乙女を捕まえてさぁ。
この、デリカシー欠如男」
「はあ?乙女ぇ?
俺にはオカン以外なにも見えんなぁ」
「一度眼科にお行き遊ばした方が宜しくてよ。
ついでにデリカシーも手に入ると良いわね」
俺は久しぶりの巳緒とのやりとりが嬉しくて、レポートのことなんか忘れてしまって昼になってしまった。
そうだ。この空気感。
俺は大好きだったんだ。
巳緒はやっぱり俺の親友。
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