巳緒・1‐2

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 あたしはぶりぶり怒りながら大学まで来てしまって、開いたばかりのカフェテリアでコーヒーを買って椅子に座った。  彰に茶化されて、ものすごく腹が立って勢いで来てしまったけれど…  どうしよう。  時間を潰すという意味でも、返事をどうしようという意味でも。  困ったな。    彰のバカ。  あんな言い方することないじゃない。  男の人の気持ちとか、訊いてみたかったのに…  高校時代、付き合ってた彼氏は友達の延長的な人で、あんまり甘い感じとか胸キュンって雰囲気がなかった。  最後も別れるというよりも、自然に友達に戻って、それぞれ新たな道に進んだという感じだった。  スマホを取り出して、あてにならない彰より、誰かに相談しようかと考えながら眺めていると「あれー?巳緒、早いね~」と賑やかな声がした。  顔をあげると、同じ学科の智香(ともか)優茉(ゆま)が、パンとコーヒー、それに大きなバッグを抱えて、こちらに来るのが見えた。  「彰くんは?」  二人はあたしの向かい側に座りながら、辺りを見回す。  「池田先生のレポート、昼まででいいからとにかく出せって言われたんだって、家で書いてる」  あたしが言うと、2人は「何それぇ~草ww」と笑う。  「そういえば、伊藤もそんなこと言ってたぁ。  あたしもそれがいい~」  智香はキャハハ、という感じで笑いながら、バッグからパソコンを引っ張り出した。  レポートをやるらしい。間に合うのかしら。
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