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あたしはそんな智香を睨む。
「智香、彰に言ったでしょ」
「え~?何を~~?」
可愛く首を傾げる智香に、あたしは身を乗り出し顔を近づけて小さな声で低く言う。
「あたしが、水野さんに告られたって」
「ああ!言った言った。
彰くん、何だって?」
智香は興味津々というようにあたしを見た。
あたしは先ほどの怒りが再燃してくるのを感じて、吐き捨てる。
「良かったなーって、ヘラヘラしてた」
「えーっそうなんだぁ、意外」
智香は、本当に意外だというように目を丸くする。
「何が意外?」
「だって、あたしが話したとき、結構ショックって顔してたんだもん。
だからてっきり、彰くんは反対すると思ってた」
智香はパソコンを起動させ、ノートとテキストを広げながら言った。
「えー全然そんな感じじゃなかった!
むしろお勧め、みたいな。
8時に家に来いとか言っといて追い出すしっ」
「まあ、彰くんとしてもフクザツなんじゃない?
彰くんと巳緒って、傍から見ると異常に仲いいけど、付き合ってるわけじゃないんでしょ?」
と優茉が買ってきたらしいパンをかじって咀嚼しながら言う。
「ないない!」
あたしは目の前で手を振る。
優茉は訳知り顔に続けた。
「だから、仲のいい女友達を取られちゃうみたいで寂しいと思ってるけど、それを言っちゃったら、巳緒に引かれるのも判ってるし」
うーん…そうかあ…
あたしは考え込む。
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