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第一話
はるか昔世界は一人の魔女によって支配されそうになった。だが、世界は魔女の好き勝手を許すことはなく協力し合い魔女を封印することが出来た。
魔女の名はレイカ・ブリジット。
あれから数百年
魔女が封印されてから数百年が過ぎてもこの戦争は語り継がれている。
「はい。今日はここまでちゃんと予習はしてこいよ。特に寝ていたライル・ブラッド」
教師の言葉に一斉にクラス全員が一人の少年の方に向く。
「ふぁ~い」
そこには今起きたように伸びをしながら返事をする黒髪の少年がいた。
「本当にお前があの英雄の子孫なのか疑うな」
教師が言う英雄とはかつて魔女レイカ・ブリジットを倒すのに活躍したライカ・ブラッドのことである。
「先生~。英雄は先祖であって俺は所詮子孫でしかないですよ」
面倒臭そうに話すライル。
「・・・・・・」
彼の言葉に教師は黙らざるを得なかった。英雄は英雄であり所詮ライルは子孫でしかないのである。
「はぁ~、とにかく予習はちゃんとしておけよ」
教師はため息を吐きそのまま解散とした。
「ライル相変わらずだな。夜はちゃんと寝ているのか?」
ライルが帰る支度をしているとクラスメートの一人クレイ・フッドが声を掛ける。
「寝てるよ。先生の話は眠くなるから仕方がないだろ?」
「まぁ、確かに眠くなるな。でもそんなに寝ていたら授業ついていけなくなるんじゃないのか?」
「いや、僕の家だよ?耳に胼胝ができるほど戦争の話は聞かされているよ」
「ああ、そういう事か」
ライルの言葉に納得したクレイ。ブラッド家では英雄の子孫ということから大昔の戦いはライカ・ブラッドがどのようにして英雄へとなったのかという武勇伝を耳に胼胝ができるぐらいに聞かされているのである。
「それじゃあな」
「また、明日」
少し話した後クレイと別れて帰宅するために外で待つ車に向かう。
「坊ちゃまお帰りなさいませ」
車から降りてきたのは綺麗な金髪をポニーテールにしたメイドの女性だった。
「ただいま、クレアさん」
彼女はクレアといいライルの専属のメイドである。
「今日の学校は如何でしたか」
「いつも通りだよ」
「そうですか。では、お乗りください」
車の後ろのドアを開けライルは乗り込む。
「出発いたします」
「うん」
「そう言えば今日は昔の戦争の話を授業でやったよ」
車がしばらく進んでから今日の授業の話をする。
「そうでしたか。真面目に受けられましたか」
「いや、寝ちゃった」
バックミラー越しにクレアはライルを見るがライルは頭を掻きながら寝ていたと正直に話した。
「真面目にお受けください。坊ちゃまはブラッド家の次期当主なのでございますよ。家に恥をかかせてはなりません」
「家って何時まで昔のことに拘るんだろう。それに、戦争のこと何て耳に胼胝ができるぐらいに家で教えられたんだよ?今更教えてもらうことなんてないよ」
「それは・・・・・・すみません」
自分の主にそう言われると教えていたクレアは言葉を詰まらせたが自分もさすがにやりすぎなぐらい教えてしまったと思い謝罪した。
「お帰りライル。クレアもご苦労様」
「ただいま母さん」
「仕事ですのでお気になさらず」
ライルが家に着きクレアと共に中に入ると母親のアイカ・ブラッドが出迎えた。
「帰ってきて悪いのだけどライルあの方がお呼びよ」
「えぇ~あの人が~」
アイカの言うあの方とはブラッド家が代々秘密にしている存在である。ライルはその人が苦手でありあまり近づきたくないために嫌な顔をした。
「そうよ、何かいつもと違う真剣な表情でいたわね」
「珍しいですね。あの方が真剣な表情とは・・・」
クレアが話す。あの方はあまり真剣な表情になることがないのである。
「取り合えず行ってきなさい」
「いってらっしゃいませ」
「行きたくないけど行ってくる」
そう言いライルはあの方が居る嫌々と地下へ向かう。
コンコン
「失礼「入ってきていいわよ~」・・・・・・はぁ~」
ライルがノックをし「失礼します」と言う前に中から間延びした声が聞こえてきたことにため息を思わずついてしまう。
ガチャ
「ライカさんいつも僕の言うことを途中で遮るのやめてもらいません?」
ライルは扉を開けて中に入り扉を閉めながら苦言を中にいる女性に言う。
中にいたのはソファーの上でだらしなく横になり新聞を読んでいる女性だった。
「いいでしょ別に」
何でもないかのように話すライカと呼ばれた女性。
「はぁ~こんなのが英雄だなんてね」
「何か言ったかしら」
「イ、エ」
思わずぼやいてしまったライルであったがライカに睨まれながら聞かれると目を逸らす。彼女こそがかつて魔女との戦いにて英雄と呼ばれたライカ・ブラッド本人である。
彼女は大昔の人間であるがある使命の為に自分自身に呪いをかけ肉体は若々しく本人が言うには魔力も全盛期のままで今日に至るまでの長い年月一族を見守り何よりある使命を果たすために生き続けている。と伝えられている。
「まぁ、今はいいでしょう。とりあえずこれを見てくれるかしら」
そう言って何かの今読んでいた新聞を渡してある部分を指さした。
「これは今日の新聞ですか?」
「そうよ。その小さい記事を見てくれる?」
ライルは手渡された新聞を見ると本当に小さい記事でそこには『死者が歩く!?』と題された記事で場所は墓場のようである。
「この記事がどうかしたんですか?」
「ええ、記事が気になって私も少し調べたいのだけどここだけでは限界があるから調べてきて欲しいのよ」
「こんな記事を「かつてレイカ・ブリジットは死者を蘇らせる研究をしていたわ」!?」
ライルの発言に被せるように話したライカの言葉はライルを驚かせるには十分だった。
「死者を蘇らせる研究はあなた方の時代でも既に禁止だったと思うのですが?」
死者を蘇らせる研究は禁止事項とされているため判明した時点で処分される。
「ええ、そうね。それでも彼女は研究を続けた。処分されたとしても」
「理由は?それほどまでに続ける理由があったんですか」
「さてね。その話はあなたが帰ってきたらね」
「・・・わかりました」
ライカはこれ以上話すなら先に行って調査をしてからと話そうとはしないためライルは仕方なしにこの記事が書いてある場所に行くことにしこの場を後にした。
「あなたはまだこの世界を憎み恨んでいるのね」
ライルが行った後、ライカは一人呟いたその表情はとても愁いを帯びた表情であった。
一方でライルは
「はぁ~」
「如何なさいました?」
地下から上がってきて直ぐに出かけることをメイドのクレアに言い車で現地に向かってもらっている途中ライルはため息をついた。
「いや、新聞の書いてあることがもし死者だとしたら大変だなって」
新聞記事を見ながら呟くライル。
「そうですね。それに、あの方がこんなことを気にするとは思えないのですが。いたずらにしか思えないのですが。何か理由でもあるのでしょうか?」
「さぁこっちが知りたいぐらいだよ」
(流石に話せないよな。レイカ・ブリジットが死者を蘇らせる研究をしているなんて。でも、彼女はなぜ世界を支配しようとしたんだ?それに、死者を蘇らせる研究をしているなら封印された後にでも広まっているはず。禁止の研究をしているなら戦争に投入してもよかった筈。でも、そんな話を聞いたことがない。なぜ?)
ライルは分からないと答えるが心の中では疑問が次々に湧いてきて思考の海に入っていく。
「・・・・・・ちゃま」
(一人の力で戦争なんてできないはずなら何処かの国が人員を出しているはずでも・・・・・・)
「・・・・・・ちゃま、坊ちゃま!!」
「うわ!!・・・・・・ど、どうしたの?」
クレアの声に驚いて思考を中断して聞くライル。
「いえ、目的の場所に着いたのですが・・・・・・」
「ああ、ごめん考え事してた」
クレアに呼ばれてライルは自分が考え事に没頭していたのに気づき謝った。
「考え事ですか?」
「何でもない早く行こうか」
「わかりました」
クレアはライルが何を考えていたのか気になったが何でもないと言われては何も言えず大人しくついて行く。
「う~ん。今のところ何もないみたいだね」
「そのようですね。いかがいたしましょうか?」
二人は車から降りてしばらく墓場を歩いたが特に何もなくどうするか困ってしまっていた。辺りは既に真っ暗で先ほどまで出ていた月も雲に隠れてしまい今はクレアが使っている携帯式のライトだけが明りになって自分たちの周りを照らしている。
ちなみにこの携帯式ライトは光魔法が使えない人のために開発され販売されている。
「とりあえず車に戻ろうか」
「わかりました」
ガサッ
「「!!!」」
二人は車に戻ろうとしたが草むらから音がして立ち止まりクレアはライトで音のした方を照らし警戒する。
「・・・・・・」
草むらの中にいるために見ずらいが肩の広さから男だというのがかろうじてわかった。
「人?」
「ですが、こんな時間になぜ?」
照らされていても尚見られたくないのか出てくる気配がない男であったが二人は男に違和感を感じて近づかずに留まる。
「・・・・・・」
「あなたはこんなところで何をしているのですか」
「・・・・・・」
クレアは質問するが答えは返ってこず何度か別の質問をするが全て無言で答えが返ってくることがなかった。
「クレアさん様子が変じゃないかな?」
「ええ、そのようですね」
「だとするとあの新聞も嘘じゃなかったということかな」
ライルがクレアと小声で話し合う。
「しかし、こんなに暗くては・・・・・・」
「確かに暗いし僕は光の系統の魔法は習得していないけど風魔法は習得しているんだよ」
ライルはそう言いながら魔法陣を展開し空に向かって風が放たれる。すると雲がかかっていた空に月が現れ辺りを月の光が照らされ人の姿が露わになる。
「なっ!?」
「!!!」
クレアは声を出して驚きライルも声を出さなかったものの驚き目を見開いた。
そこに立っていたのは男であったがその姿はボロボロの服に首の骨が折れて一発で致命傷なのがわかるほどの酷い姿であった。
「あらら、バレてしまいましたか」
驚いている二人に突然女性の声が聞こえそちらに顔を向けると一人の淡い紫色の髪のライルと同い年ぐらいの少女が立っていた。
「何者ですか」
クレアは直ぐにライルを後ろに下がらせ庇うように前に出る。
「う~ん、そうだね。ソレを生み出した張本人かな~」
死体を指さしながら楽し気に話す少女。
「何故このような酷いことを」
「昔から何代も前のご先祖様から続いていることだからね」
「先祖?」
先祖と言う言葉にライルが反応する。
「そうそう!」
「ですがあなたのやっていることは禁止されていることです直ぐに処分されますよ」
「それでもやり続けてきたあの人の願いだから」
「あの人?・・・・・・まさか!?」
いち早く反応したのはライルであった。
「坊ちゃま?」
「君はレイカ・ブリジットの末裔か!?」
「!!へぇ~よくわかったね。そうだよ。私は確かにレイカ・ブリジットの末裔よ。それにしても私のことに気づいたということは君がライカ・ブラッドの末裔みたいだね」
少女は一瞬驚いたが直ぐに冷静になりライルの正体に気づいた。
「そうだよ。でも、まさかブリジット家が存続していたなんて」
「確かに戦争を引き起こしたブリジット家は本来であればお家取り潰しになるけどでも、方法は沢山あるのご先祖様に子どもがいないと思わせたりね」
「「!!!」」
少女の言葉に二人は驚愕した。それは、レイカ・ブリジットに跡継ぎはいなく彼女が封印されたことにより自然とブリジット家は断絶したと伝わっている。
「クスクス」
「?何が可笑しい」
突然笑い出した少女に訝し気になるライル。
「いえ、ブラッド家に会えるなんて思わなかったからね。せっかくだからこれらの相手になってくれる」
少女は手を前に出す。手に魔法陣が現れ操作するとそれは起きた。
バッ!バッ!
次々に地面から手が出てきて死者がはいずりながら出てきた。
「この国や近隣諸国は土葬で助かります死体が沢山ですから」
「くっ!」
「クレアさん一旦退こう」
自分たちが不利だと感じ退くのをライルは提案する。
「わかりました」
地面から出てきた死者が近づいてきたがクレアが敵を殴り倒す。
「マジ?」
クレアの行動に女性が啞然としているその間にライルは魔法陣を展開し風を吹かして辺りの敵を吹き飛ばしながら段々とクレアと共に空へと浮いていく。
「!!あらら、流石にそれは想定外ですね。いいでしょう今回は見逃しますが次は殺させてもらいます。ああ、名前はレイネ・ブリジットです。あなたは?」
「ライル・ブラッド」
空に浮かばれたのは想定外で目を開く少女レイネだが直ぐに笑みを浮かべ自分の名前を言いライルも名乗り返す。
「ふぅ、逃げられてしまいましたね」
レイネはライルが去った後しばらくその場にいたが踵を返し去っていく。
「失礼します」
「失礼いたします」
ライルとクレアは家に着くと直ぐに地下へと趣ライカの部屋に入っていく。
「あら、調査は終わったの?」
「終わりました」
「そう。何かわかった?」
「はい。レイカ・ブリジットの末裔に会いました」
「!!・・・・・・そう」
ライルがブリジット家の末裔に会ったと言うと一瞬驚いたが直ぐに平静になる。
「しかも死者を操っていました」
「!!!」
クレアが続いて言うとまた驚きを露わにした。
「ライカ様レイカ・ブリジットについて何か知っていることがあるのではないですか?」
クレアは先ほどのブリジット家の末裔に会ったときは直ぐに平静に慣れたのが死者を操っていたと話すと最初よりも驚きを露わにしたのが気になりクレアは訊ねた。
「そうね。潮時ということかしら。真実を二人に話しましょう」
ライカはあの戦争が始まる数年前からの話を語る。
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