衝撃の事実

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そして俺たちが二人でいると、周りの視線は一人のときの何倍も集まってくる。 入学式の後の騒動以来、二人で会うのは初めてだ。 あの時は、『学部は』とか『名前は』とか聞いてくる初対面の人たちに俺が辟易していたら、慎太郎が得意の寒冷前線で一掃してくれた。 入学式は文系学部が午前の部で、理系学部が午後の部だったから、俺たちのときにはいくつもの学部が集まってたんだ。このリトルカフェは、俺たちの教育学部が使っている学部棟の一角にあるから、同じ学部の学生が多い。 教育学部だけあって、若干落ち着いている…ような気はしてる。 好き好んでこんな必修科目の多い忙しい学部に入ってくる、大体が教員志望の学生なんだから、当然かもしれないけど。 理系学部の学生は理系っぽく見えるし、法学部は頭よさそうに見える。 先入観かな。 というわけで、今のところ二人掛けの席に向かい合って座っている俺たちに、直接割り込んで話しかけてくるような学生はいないというわけなんだけど。 でも、ちらちらと見られている雰囲気は継続して感じている。 どうやったら慎太郎のあの冷たい感じが出せるのかな。今度教えてくれないかな。 スキル:寒冷前線 みたいなの。 そんなアホなことを考えている俺を放置して、慎太郎は慎太郎で他のことを考えていたようだ。はたから見たら、二人で向かい合って座りながら、お互いに何を話すわけでもなくじっとしてる、変な人たちだったろう。 ほのかに頬を染めて俺に視線を向けた慎太郎に気づいて、近くの席の女子学生がざわめいた。 周囲のそんな反応にはある程度免疫があるので、俺たちはまったく気にせず話を続ける。 話の内容を聞かれるような距離ではない。 可能な限り窓際を陣取るのも、四方八方に気を張らなくていいからという理由だ。 「……と、もう一度…」 「ん?」 安い割にボリュームがあるから気に入っているチキンカツ丼【250円】を口に放り込みながら、聞こえなかった、と目で問い返す。 言葉が不足気味な奴だけど、もったいぶったり口ごもったりすることはめったにないから、こんなに煮え切らない慎太郎を見ることは珍しい。 判断は早いし、何か聞いたらびしばしと答えが返ってくるのが通常運転だ。
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