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慎太郎は、若干頬を染めたままで言い直した。
「若菜と! 一緒にいられる場所を作りたい」
「……」
……マジか。
思わず箸が止まる。
っていうか、こいつやっぱり諦めてなかったのか。
卒業してから…まだ一か月たってないけど。
俺だって同じだ。
川北と全然あえなくなって、連絡する理由すら見つけられなくて。
一人で悶々としてる。
でも、慎太郎は…
直接お隣にピンポンしに行けばいいんじゃないのかな。
なんで、俺を誘ってまでオケ?
やっぱりよくわからなくて、とりあえず慎太郎の事情から確認することにした。
「お前、齋藤のこと、やっぱりまだあきらめてなかったんだ…」
男が見ても文句なしの整った顔立ちをしていて、背が高くて、おまけに人前に出ることが多くて目立つから、慎太郎は女の子によくもてる。
今までに告白してきた女子の正確な人数や名前なんて、こいつ本人すら覚えてないだろう。
でもこいつは全然彼女を作らなくて、三年の最後の合宿のときに男子部屋で青木がしつこく食い下がったんだよな。
俺も佐々木も、『多分慎太郎なりになんか思うことがあるんだろう』ってことで触れずにいたところに、勇猛果敢に突っ込んだ。
だって、誰でも思うだろう。三年間ずっと、誰に言われても断ってるんだよ?
絶対、何か事情があるに決まってる。
そしたら、齋藤のことを狙ってるからって堂々と宣言した。
みんな目が点になったよな。
あとから慎太郎に聞くと、別につるし上げられて吐いたわけじゃなくて、あのタイミングでカミングアウトしたのも何か計画のうちだったらしいけど。
まぁ、それはそうだろう。
青木は空気クラッシャーなところもあるけれど、アホではない、と思う。
慎太郎を本気で怒らせるところまでは攻めないし、多分。
あの程度の青木の口撃に、慎太郎が負けたはずはない。
齋藤は本当に男勝りなコンサートマスターで。もちろん楽器の腕は誰よりもいいんだけど、気が強くて金管楽器にもきっちり意思表示をするやつだった。
クラスにいるときは、俺にとっても普通に友人として、さっぱりと付き合える貴重な女子ではあった。でも、音楽に関しては絶対に譲らない信念みたいなのがはっきりしてて、別人みたいだったな。
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