プロローグ~Side 慎太郎

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結局俺は、若菜に何も言えないままに高校を卒業し、合格した第一志望校法学部での大学生活を開始した。 高1の夏に友人関係は回復できたと思ったが、そこからは本当に亀以下の歩みだった。 ちょうどそのタイミングで、生徒会長の任期が始まり、高2の前半まで忙殺された。それは中学の時も同じだったから、わかっていて引き受けたこと。 でも、副会長が最後まで使える腹心にならなかったのは、きつかったな。まぁ、若菜も健太も取り込める状況ではなかったし、新しく出会った生徒会メンバーを使えるように、うまく操縦できなかった俺の力不足といえばそれまでだ。 自分でもわかってる。 俺の欠点は、使えない人を使うのがうまくないってこと。 信頼しきれない相手に仕事を任せることを、躊躇する。相手が使えないと思ったら、自分でやった方が早いと思ってしまう。 健太は、とにかく一旦は人に任せて、ミスを見越してフォローして回る。最終的に間に合わないと判断したら手を出すけど、可能な限り人を動かそうとする。 …見習うべきことだと思ってる。 生徒会長と部長を逆に配置していたら、多分健太はあの生徒会メンバーをうまく使いこなしただろう。オケのメンバーなら、俺の性格でもみんなが勝手にちゃんとやってくれたはず。そんなことを思いながら、自分の性格をひっくり返すこともできずに、結局は生徒会支部という形で健太の力を借りながらなんとか一年の任期を終えたんだった。 生徒会の任期が明ければ、今度は部活の演奏面をリードしなくてはならず、若菜とは立場的に反目することが多かった。まぁ、友人としての信頼関係が回復できていたから、ぶつかっても大丈夫という安心感があったのは助かったが。 そうでなければ、俺は若菜に反対意見なんか出せなかったかもしれない。 お互いの立場を背負って、時には周囲を引かせるほどの激論を戦わせたこともあったな。
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