エピローグ

10/12
47人が本棚に入れています
本棚に追加
/390ページ
祥子の状況を知った齋藤や慎太郎の方が心配して、いろいろ連絡してきてくれたけど、俺は意外と落ち込んでいない。 もちろんスカイプの設定をしたり、携帯が確実につながるように確認したり、いろいろ下準備はしているけどな。 毎日会いたいし触れたいし、抱きたい。 それはもちろんそうなんだけど、そもそもこの半年ちょっと、思い通りに会えてたわけじゃない。 それぞれの大学生活があって、祥子には同居家族もあって、俺たちの関係は現状ではその次だ。 一週間会えないことなんて何度もあった。祥子は真面目だから、試験前は図書館デートにすら応じてくれないこともある。お互いの試験期間がズレたりしたら、平気で三週間ぶりとかってこともあったんだから。 そういう意味では、毎日毎日一緒にいられた高校時代の後、あまり会えない一年を経験したことは、よかったかもしれない。 そういえば大学一年の春は、会えないことがものすごくつらかったような記憶がある。当時はちゃんと付き合えていなくて、そのまま関係が切れてしまうんじゃないかって不安も大きかったんだけどさ。 高校卒業してすぐに留学だったりしたら、俺は精神的に持たなかったかもしれないな。 俺たちはこれから、少しずつ社会に出ていく。 働くようになったら、結婚しない限り平日なんてまず会えないわけで。いつまでも学生気分でお互いだけを見つめあってるわけにもいかないんだろう。 夏休みには、俺がバンクーバーに会いに行くつもりでいる。 正月には祥子が帰ってくるだろう。 来年の春休みにも、俺が行けばいい。 それが全部できたら、本当に会えないのは最長で…約4か月。 100日ちょっとだ。10日が10回。 …何とかしてみせる。
/390ページ

最初のコメントを投稿しよう!