衝撃の事実

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衝撃の事実

無事現役で大学に進学した俺、速水健太は、大学ではオーケストラに入団しなかった。 教育学部の中でも必要単位が一番多い、小学校の教員養成課程なので、毎日練習があるオーケストラに入るのを躊躇したのだ。大学には部室等があって、オケの部室も一応見には行ったんだ。楽器庫兼打楽器練習室もあって、部所有のベースもあるところまで確認はしたんだけど。 そこまででやめておいた。 俺は、高校二年ころまでは、専科の色が強い中学や高校の教員を目指していたのだけれど、三年の春の三者面談でいろいろと先生にも話をして、小学校の教員志望に変更した。そうなると図工やら音楽やらまで必修になってくる。 俺が「学校の先生」という職業を意識したのは、自分が中学の時のトラブルを一緒に乗り越えてくれた先生がいたからだ。そのまま安直に中学や高校の教師をめざそうと思っていたんだけど、いろんなことを調べて大人の話を聞いていくと、どうも中高では生徒とそんなに深く関わることはできないかもしれないと思うようになって。むしろ小学校の方が、朝から夕方までクラスの生徒と一緒に過ごすんだし、俺のイメージする仕事に近いのかな…と思ったんだ。 高校の担任には、『家庭科も必修だから頑張れよ』なんて笑われた。担任の先生が、たまたま家庭科の先生と仲が良かったらしいんだ。俺が、何かの拍子に『針が俺の左指を刺しにくる』とか『あ、今日合奏なのに血が出ちゃった』とか言って騒いだのを、聞いていたんだって。 けど、そんな細かいところを知らないいろんな人から『向いてるから、頑張れ』って応援してもらえるのは嬉しいと思う。 俺は、時間の使い方については不器用な方ではないから、多分サークルと学業の最低限の両立はできるだろうと思う。 でも、楽しくなるとのめりこんでしまうタイプでもあるので、また役職でも引き受ける羽目になると危険と判断したのもあった。 教員採用試験に向けた学習サークルに誘われ、顔を出してみたらなかなか肌に合った。一応保留中ではあるが、来週にはそちらに参加申し込みをしに行こうかと思っている。
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