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大学って、高校までとは全然サイズ感が違う。
同じ学部でも何百人も学生が存在していて、クラス感はなんとなくあるけれど、いつもそのメンバーで動くわけではない。
入学式の時に一緒の塊に座っていた教育学部の、小学校課程のなかに、俺が選んだ社会科専攻がある。その専攻の中でも英語の授業のときは3つか4つに分かれてる。
専科の授業は専攻単位で受けることもあるし、教育学みたいなのは学部全体をいくつかに分けて大教室での講義になることもある。つまり、顔と名前が一致するのはどんなに頑張っても専攻が同じ奴まで、ってことだ。
ましてや別の学部となれば使う校舎も違うし、広い構内でたまたま会うなんてこともまずない。
あいつと一緒に仕事するのは、めちゃくちゃ楽しかったんだ。
多分お互い、思考回路が似ているというか。スピード感が合うというか。
慎太郎は言葉が足りない奴なんだけど、何がしたいのかは大体わかったし、オケを動かすのも生徒会を動かすのも、楽しかった。
同じ大学に進学を決めたと聞いて、内心すごくうれしかったのも本当なんだ。
でも、大学で学部が違うと、もう別の大学と同じくらいに遠い。
示し合わせでもしなければ、偶然同じサークルに入るなんてことはないくらいの数があるし、そもそも教採系統のサークルに慎太郎が入ってくるわけはない。
残念だけど、このままあいつとも疎遠になるのかな。
…と思っていた慎太郎に声をかけられたのは、必修科目の講義が始まってすぐの週末だった。
「健太、一緒にOBオケ立ち上げない?」
俺の向かいに座った慎太郎の第一声が、これだった。
去年の夏合宿以来の、目が点。だ。
慎太郎につかまって連れ込まれた場所は、学内のリトルカフェ。
マンモス大学なので学内にはカフェが3か所と食堂が2か所、ほかにコンビニも2店入っている。
リトルカフェは一番規模が小さくて、ちょっとした打ち合わせにも使いやすい。
今は早めの時間なので、そんなに混み合っていない。窓際の二人掛け席を陣取って、適当に食料を購入して座った。
ところでの、この発言だ。
俺が思わず首をかしげて固まっていると、説明を追加してくれた。
「一発オケで終わらせるやつじゃなくて、この先もずっと続ける予定。二宮高校OBオケ。立ち上げ、手伝わない?」
軽い口調ではあるけれど、この話し方は本気だ。
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