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小春日和、陽光が白亜の城を輝き照らす。メアリは窓硝子越しに自らを照らすその光を浴びて「思いついた」
「誰か!」
「はっ」
「これからピクニックに行くぞ。今すぐ準備せい」
メアリの思いつきで城の貴族たちによるピクニックが行われることになった。
それを聞いてジャックは飛び跳ねるように喜んだ。卵やハムの入ったサンドイッチを頬張り、飼っている犬とどちらの足が速いか競争したり(チワワにすら勝てないし、勝ったことがない)大きな栗の木の下で母の膝枕で御伽噺を読んでもらったり、などと言ったことが出来るピクニックがジャックは大好きであった。
「母上! ピクニック楽しみですね!」
「そうよのうそうよのう」
メアリはジャックの頭を撫でる。大臣はそんな二人に割り込むように進言した。
「あの…… 女王陛下。アンリ王子には」
ジャックがそれを遮るように言う。
「余はアイツ嫌い! 母上と二人でピクニックに行きたい!」
二人で、とは言うが数百人の使用人を携えてのピクニックである。
「そうよのう、アンリには知らせないでおこう」
実のお子に対してこのような仕打ちとは。大臣はこう思いながら怪訝な顔をしつつピクニックの準備を始めるのであった。
「母上、今日の御伽噺は何を読んでくれるの?」
「そうさなあ、人食い魔女を退治する聖騎士の話にしようなぁ」
「初めてだね、この話」
「そうそう、今日行く平原の近くの崖の下にある森には人食い魔女がいるんだよ」
「魔女なんて子供だましはいけませんよ。母上」
「魔女はいるよぉ…… 妾のお母さんのお母さんのお母さんのお母さんぐらいの時にはこの国は人食い魔女に攻められていたんだよ。話で聞く限りでは頭からバリバリと大人を噛み砕き飲み込むような魔女だったらしいよ」
「怖い…… 怖いよ……」
「でもね、この国にふらりとやってきた聖騎士が魔女をやっつけてくれたんだよ。その聖騎士こそがこの国の聖騎士団の初代の団長になったんだよ」
「本当なの?」
「ああ、本当さ。昔から魔女退治は聖騎士の仕事とされている」
「じゃあ、今は魔女なんていないんじゃないの?」
「いいかい? 魔女は長生きなんだよ? 黒魔術と言う悪魔に通じる怪しげな術や薬を使っているんだ。それに犬猫のように数多くの子供を生むという。その前に倒した魔女の子が魔女となり今から行く森に巣食っているとされるんだよ」
「よし! じゃあ余が聖騎士団に入って、聖騎士になってその魔女をやっつけてやる」
「おうおう、嬉しいねぇ。いつかそんな日が来ることを祈ってるよ」
その時、大臣が二人の前に跪いた。
「ピクニックの準備が出来ました」
「うむ、ご苦労」
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