部長は私の光だったらしい

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 うちの部長。推定アラフィフ。独身。  普段から社長にヘコヘコするしか能がなくて、仕事といえばハンコ押しと自分でお茶を淹れて自分で飲むくらい。  皆が皆忙しい、うちみたいな小さな会社になんでこんな暇そうにしている人がいるのだろうか? って、誰もが疑問に思うような人。それが部長だった。 「でも部長。じっとしていたら皆にどんどん置いていかれるだけですよ? それにホラ、山で遭難した時は上へ上へと登った方が良いって話ですけど」 「いやいや、どうやら我々は完全に登山道から外れてしまってるようだ。こんな濃霧の中無理して歩いたら、下手したら滑落するよ。もう少しすれば霧も晴れるはずだから、それまで待とうじゃないか」 「……部長がそうおっしゃるなら」  「ここは私がしっかりしなくちゃ!」と、色々と提案してみるも、部長には簡単に却下されてしまった。  一応は上司なので、あまり食い下がるのも印象が悪いと思って、おとなしく引き下がる。こんな時まで社畜根性が顔を出してしまう私も私だな。  ……だいたい、こんな濃い霧が待っていれば晴れるだなんて、信じられないんだけど?  等と、部長に対する愚痴を心中で散々にぐちぐちしていたら――。 「あ、あれ?」 「霧が晴れたみたいですね。さ、ぼちぼち行きましょうか?」  部長の言った通り、一時間後くらいには霧はすっかり晴れてしまっていた。
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