部長は私の光だったらしい

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「目が覚めたかい?」  次に目覚めた時、私を出迎えたのは部長の心配そうな笑顔だった。  私はどうやら地面に寝かされているらしく、視界の先には満天の星空が広がっている。  いつの間にか夜になってしまっていたらしい。 「私、倒れてたんですか?」 「うん、凄い熱があったんだ。今は下がってるみたいだけど……きっと疲れが溜まってしまったんだね。気分はどうだい?」 「……大丈夫です」  言いながら身を起こす。  バサリッ、と何かが落ちる音に目を向けると、バカみたいに黄色いブランケットが目に入った。どうやら部長が私にかけてくれていたらしい。 「……すみません、足を引っ張ってしまって。部長お一人なら、今頃みんなと合流できてたかもしれないのに」 「いやいや、部下が困っていれば手を差し伸べる――それが上司の仕事だから」  そう言って、ニコリと笑った部長の顔は、いつもと同じ頼りなさげなのに、どこか頼もしくも見えた。  結局、私達はそのままそこで夜を明かした。  携帯も通じない。救助も来ない。明かりはそれぞれが持つ懐中電灯一本ずつだけ。これでは、戻るのも進むのも無理だと判断したのだ。  今は夏だと言うのに、山の夜は異様に冷えた。  部長は一枚しかないブランケットを私に貸そうとしてくれたけれど、私はそれを固辞し「二人で使いましょう」と提案した。 「後でセクハラって言わない?」 「言いませんよ、やだなぁ」  そんな軽口を叩き合いながら、私と部長は寄り添い合って寒さをしのいだ。  晩御飯は、部長が持ってきていた羊羹(ようかん)を二人で分け合った。  その羊羹の味を、私は一生忘れてないと思う――。
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