部長は私の光だったらしい

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部長は私の光だったらしい

 最近、「中高年の登山中の遭難」が増えているというニュースを目にすることが多くなった。  そんなニュースを見る度に、「調子に乗ったおじさんやおばさんが遭難するんだろうな」なんて、他人事のようにバカにしていたんだけど……まさか、私自身が遭難するだなんて夢にも思っていなかった! 『会社のレクリエーション企画として登山に行きます!』  そんな社長の思い付きでしかない一言に、社員一同がゲンナリしながらも渋々と了承したのが一ヶ月ほど前。  もともと、社長が一代で築き上げた小さな会社だ。誰も社長には逆らえない。  何せ、今どき「社員旅行」だなんて拷問でしかない行事が生き残っているくらいなのだ。お給料は悪くないけど、社内文化はブラックと言えなくもない。  そういう訳で、社員はみんな乗り気じゃないまま登山に挑んだ。最若手である私はもちろんのこと、ベテランのパートのおばちゃんでさえも、陰では不満たらたら。  それでも「初心者向けの山だから」という社長の言葉を信じて、渋々とついて行ったのが運の尽き。  突然の霧。  それでもずんずんと進んでいってしまう社長。  必死に追いすがる社員たち。  なんだこの地獄。  ――なんて最後尾辺りで内心でグチグチ言いながら歩いていたら、見事に皆とはぐれてしまったのだ。  もう、バカとしか言いようがない。  おまけに――。 「いやぁ、まいったねぇ……。こういう時は下手に動かないほうが良い。少し休憩しようか?」  私の後ろ、最後尾を歩いていた部長のおまけつき。  本当なら、一人で遭難しなかったことを喜ぶべきなのかもしれないけれども、一緒なのが部長というのが問題だった。
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