1 青島興行

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「…………まあ…いいか」 どうせ観ることもないだろうし…。 和馬はさっきまでの感動を忘れたように、ソファから立ち上がり 洗面所においてある音楽プレイヤーのボタンを親指でねじ込む。 錆びているスピーカーから、奥深い闇から這い出るようなギターの音が聞こえてくる。 和馬のお気に入り、 ニルヴァーナのsmells like teen spiritだ。 カートは自殺した。 あの子供は自殺したのか? それとも母親を撃ったの? 忘れようとしていたのに、やはりあの映画のことを頭の片隅に置いておくことにした。 顔をバシャバシャ洗って、鏡を見ると満面の笑顔の自分がいる。 和馬は笑うことしか出来ない。 涙なんて、しばらく流していないから どうしたら泣けるのかも分からない。 怖い思いなんて、いつからしていないんだ。 何も怖くなくなったんじゃなくて、自分が一番怖い存在になったんだ。 和馬はそう考えている。
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