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「…………まあ…いいか」
どうせ観ることもないだろうし…。
和馬はさっきまでの感動を忘れたように、ソファから立ち上がり 洗面所においてある音楽プレイヤーのボタンを親指でねじ込む。
錆びているスピーカーから、奥深い闇から這い出るようなギターの音が聞こえてくる。
和馬のお気に入り、
ニルヴァーナのsmells like teen spiritだ。
カートは自殺した。
あの子供は自殺したのか?
それとも母親を撃ったの?
忘れようとしていたのに、やはりあの映画のことを頭の片隅に置いておくことにした。
顔をバシャバシャ洗って、鏡を見ると満面の笑顔の自分がいる。
和馬は笑うことしか出来ない。
涙なんて、しばらく流していないから どうしたら泣けるのかも分からない。
怖い思いなんて、いつからしていないんだ。
何も怖くなくなったんじゃなくて、自分が一番怖い存在になったんだ。
和馬はそう考えている。
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