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その音が迫るたびに脈が早くなる。ドアの前をとおりすぎるように、音が遠くなる。 「…なんだよ…」 呆気にとられたのも束の間、その足音は自分を試したようにこちらへ駆け込んできた。慌ててベランダに座り込む。 洗濯機の影に隠れて、曇りガラス越しにその人影を眺めた。 あの光景を見ても、驚かず平然と部屋のなかを物色している。やけに小さな影に不思議に思ってしまう。 背の低い奴だな。 その影が奥へ入っていくのが見えて、前屈みになったとき 足先が洗濯機からぶら下がっている篭にぶつかって落ちてしまう。 その影が止まり、こちらへ向かってきた。
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