プロローグ:火曜日 渇望する かーくん

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プロローグ:火曜日 渇望する かーくん

月曜日ほどではないが、俺も中々嫌われている。 ほんの1日、過ぎただけ。 まだまだ先は長く気は抜けず、憂鬱が晴れるには早い。 むしろ場合によっては、鬱憤へと悪化するかもしれない。 そんな危険を孕んでいる、 月曜日の一歩先──火曜日。 俺は、俺こそが1番の嫌われ者だろうと、そう思っていた。 月曜日に会うまでは。 彼は、俺以上に負の感情にまとわりつかれていた。 背負いきれないほどのそれに、今にも押しつぶされそうになっていた。 あまりにも暗すぎる顔は、俯いていて見えなかった。 そうする気持ちはよく分かった。 俺もそうだったからだ。 俺たちは、どうせ嫌われる── というより、すでに嫌われているのだ。 存在として。 だから、仲良くするなんて無駄でしかない。 彼も、なるべく誰にも関わらないように、無駄を省くようにしているんだと思った。 だから── 「あの…………その、はじめ、まして」 ──そこからはじまることがあるなんて、思ってもみなかった。 でも、考えてみれば当然ともいえる。 彼は週の『はじまり』なんだし、 俺という存在の『はじまり』でもある。 そうして俺たちは繋がった。 0から1の世界になった、その瞬間を俺は今も忘れない。 今でも、俺たちは相変わらず嫌われ者だ。 でも俺は、俺たちが分かり合っていればそれで良いと思うし、それだけでいい。 そう、思っていたのに──…… 「きみという『はじまり』があるからこそ、ボクはボクでいられるんだ」 ──あの時の月曜日の顔を、忘れることはないだろう。 俺たちの世界はその声に、突然喰い破られた。 俯きがちで沈みがちな月曜日が、時折ふと見せる表情がある。 それは闇の雲間から顔を覗かせ、仄かに輝く月のように美しいものだった。 そして、それを知っているのは俺だけだった。 俺だけで良かった。 「だからボクは、キミのことが好きだよ」 終わりが、はじまりに告げた言葉。 それは俺にとって 俺たちの世界にとって── 新たなはじまりか、それとも終わりなのか。 果たして、どちらの宣告なのか── 今はまだ、知りたくもなかった……。
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