5人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ:火曜日 渇望する かーくん
月曜日ほどではないが、俺も中々嫌われている。
ほんの1日、過ぎただけ。
まだまだ先は長く気は抜けず、憂鬱が晴れるには早い。
むしろ場合によっては、鬱憤へと悪化するかもしれない。
そんな危険を孕んでいる、
月曜日の一歩先──火曜日。
俺は、俺こそが1番の嫌われ者だろうと、そう思っていた。
月曜日に会うまでは。
彼は、俺以上に負の感情にまとわりつかれていた。
背負いきれないほどのそれに、今にも押しつぶされそうになっていた。
あまりにも暗すぎる顔は、俯いていて見えなかった。
そうする気持ちはよく分かった。
俺もそうだったからだ。
俺たちは、どうせ嫌われる──
というより、すでに嫌われているのだ。
存在として。
だから、仲良くするなんて無駄でしかない。
彼も、なるべく誰にも関わらないように、無駄を省くようにしているんだと思った。
だから──
「あの…………その、はじめ、まして」
──そこからはじまることがあるなんて、思ってもみなかった。
でも、考えてみれば当然ともいえる。
彼は週の『はじまり』なんだし、
俺という存在の『はじまり』でもある。
そうして俺たちは繋がった。
0から1の世界になった、その瞬間を俺は今も忘れない。
今でも、俺たちは相変わらず嫌われ者だ。
でも俺は、俺たちが分かり合っていればそれで良いと思うし、それだけでいい。
そう、思っていたのに──……
「きみという『はじまり』があるからこそ、ボクはボクでいられるんだ」
──あの時の月曜日の顔を、忘れることはないだろう。
俺たちの世界はその声に、突然喰い破られた。
俯きがちで沈みがちな月曜日が、時折ふと見せる表情がある。
それは闇の雲間から顔を覗かせ、仄かに輝く月のように美しいものだった。
そして、それを知っているのは俺だけだった。
俺だけで良かった。
「だからボクは、キミのことが好きだよ」
終わりが、はじまりに告げた言葉。
それは俺にとって
俺たちの世界にとって──
新たなはじまりか、それとも終わりなのか。
果たして、どちらの宣告なのか──
今はまだ、知りたくもなかった……。
最初のコメントを投稿しよう!