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プロローグ:日曜日 ニコちゃん ニコニコまた明日
世の中にはたくさんの人がいて、たくさんの考えがある。
そのぜんぶを理解するなんて、とてもむずかしい。
ゆっくり考えれば、ほんの少しは分かるかもしれないけれど。
そうしているうち眠くなってしまうし、実際寝てしまう。
ボクは、そういう日。
お休みとされている、日ようび。
だからボクがよく寝てしまうのは、自然なこと……だと思う。たぶん。
ぽかぽかしたみんなの気持ちは、ひだまりの中にいるみたいで心地良い。
だけどもちろん、そうじゃない人もそうじゃない時もある。
日曜日になれば──そんな期待と。
せっかくの日曜日なのに──そんな憂鬱と。
たくさんの感情がいっぱいあって、いっぱいありすぎて。
ボクはそれを抱えきれなくて、いつも眠くなってしまうんだ。
眠るのは気持ち良いから、別にいいし問題なんて何もないんだけど。
眠れば忘れるし、何も考えなくていいし。
そうやって休んで、リセットして、また明日。
起きたら新しい1週間になっている、その繰り返し。
そんな中で、きみに出会った。
おわりをただ繰り返していたボクの前に、はじまりというきみが現れた。
きみははじまりなのに、最初からたくさんの感情を抱えさせられていて。
そんなにもたくさんの感情を背負わされているのに、自分をちゃんと持っていて。
ボクにはそんなきみが、なんだかとても──あたたかく、見えて。
抱きしめたくなった──そう思った時には、もう抱きしめていた。
「きみという『はじまり』があるからこそ、ボクはボクでいられるんだ」
ボクだけじゃなかった。
ひとりで抱えていたと思っていたけど、そうじゃなかった。
ボクは眠って、休んでばかりだったのに。
きみはそんな風に、他の人たちと一緒に歩いていたんだね。
明るかったとしても、どんなに重かったとしても、歩いていくしかないその一歩を。
そのはじまりを──いつも、いつも。
「──だからボクは、キミのことが好きだよ」
たくさんの感情から逃げることなく、一緒に寄り添って歩いている──そんなきみが。
隣りあわせではあるけれど、ぼくたちは反対側にいた。
たくさんの感情との付き合い方も、まるで反対だった。
みんなに寄り添っている──
そんな優しいきみに、ボクは寄り添っていたいと思った。
これからはもうずっと一緒に、そのとなりにいたいと思った。
それは、ボクが日曜日だから?
そうじゃない。
ぼくはきみがキミだからこそ寄り添いたいと思ったし、そうであってほしいと思った。
この感情は、自分のものであってほしいと──自分自身のものだと信じたい。
ボクもキミも、日曜日と月曜日だからじゃなくて。
ただの、ボクとキミとして──そう思ったんだって。
ボクにもちゃんと、自分があるんだってことを意識した──
これがその『はじまり』だったんだ。
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