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「ここに住んでるの?」
「うん」
「ずっと?」
「ずっとだよ」
では立ち入り禁止の立て看板やロープは何だったのだろうかと、一之進と勝は顔を見合せた。お互い考えていることは同じようだった。
「代々この家を引き継いでる家系なんだ」
「へぇ、そんな家系があったんだな」
とりあえずは納得したように勝はうなづいた。
「広いからかくれんぼでもしない?」
少年は全てのうやむやを飲み込んでしまうようなうっとりする笑顔と誘い文句を放った。その表情があまりに艶やかで、立て看板とかロープとかそんな小さいことは置いておいて、今目の前にある現実だけ見ていればいいような気になってくる。
「……名前は?」
一之進が尋ねる。
「良治だよ」
「良治かあ!何て呼べばいい?」
全く何の疑いも抱かない俊太は、天真爛漫に猫のようなふにゃふにゃした声で聞く。
「んー、良治でいいけどなあ」
「ちなみにね、こっちのメガネは勝でまーくん。その隣のぼーっとしてる感じなのが一之進でいっちゃん。俺はね、俊太でしゅんしゅんだよ!」
俊太の説明を聞いていると、さすがに小学六年生でこのあだ名はないのかなあと苦笑いする一之進と勝だったが、俊太と同様、良治は気にも止めていないようだった。
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