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「じゃあ、僕は良くんかな」
「よし、じゃあ良くんに決定!かくれんぼしよう」
「家族は?家の中で暴れて大丈夫なの?」
暴れる前提で勝が尋ねる。
「夜まで誰も帰ってこないから遊び放題だよ」
にんまりと笑う良治の表情は、心から何かを楽しんでいるように見えた。
「夜まで仕事だよね?勝手にいいのかな」
一之進が再度確認する。
「いいんだ。そういうの気にしない親だから。むしろうれしいと思う。同い年くらいの友達なんて全然いなかったからね。僕が友達と遊んでるって知ったら大喜びだよ」
「なーるほど!それなら俺らがいつでも遊んであげるよ」
先ほどまで一之進と勝の後ろに隠れてブルブル震えていたくせに、と二人は半笑いで俊太を見つめた。
「見つけられないと困るから僕が鬼をするね」
「見つけられないとかある?」
「わりと広いんだ、この屋敷。僕は隅から隅までわかるから」
一之進と勝はようやく乗り気になってきたようで、良治に向かって笑顔を見せた。
この日以来、良治と一之進、勝、俊太は毎日のように一緒に遊ぶようになった。みんなとたくさん走り回るためなのか、着物を着ていたのは初めて会ったあの日だけで、それ以外はみなと同じような洋服を着ていた。
かくれんぼは一番楽しく、屋敷は広いが無駄なものがないため隠れるのは難しいと思われたが、シンプルな中にも面白い隠れ場所がいっぱいあった。
階段の後ろ側に子ども一人が入れるスペースがあったり、なぜか畳が一枚めくれる場所があったり、地下倉庫のような入り口が絨毯の下に隠されていたり……しかし、どこに隠れても良治が必ず見つけてくれた。
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