第一章「私達の初恋」

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「バッカみたい…」 後ろを振り返ると、誰も居ない。私は走るのをやめてトボトボと家までの道のりを歩き出す。 歩きながら、自然と目尻に涙が浮かんだ。そのままポタポタと、頬を伝って制服に染みていく。 「…ふっ……ぅ」 どうして、相沢から告白されるなんて思っちゃったんだろう。普段の言動や私への態度を考えれば、そんな筈ないってすぐに分かるのに。 「っ、ひ、酷いっバカ…死ねっ」 グズグズ泣きながら、足だけは前に進めた。腕で拭っても拭っても、涙は止まらない。 幾らなんでも、ひど過ぎる。もしかしてこれが、大嫌いって言ってしまった私への復讐ってわけ? 真剣なフリして私を騙して、後で盛大に笑い者にする気だったんだ。絶対絶対、そうなんだ。 だってじゃなきゃ、あんな風に黙ったりしない。きっとネタバラシする前にバラされて、ガッカリしてたに違いない。 もし本気で私が好きなら、庇ってくれるはずだ。友達にちゃんと、言うはずだ。それをしなかったってことはやっぱり、ただの嫌がらせ。 「…ぅ…グスッ……ふぇっ」 相沢も、その友達も、大っ嫌い。けど一番嫌なのは、あの時一瞬でも本気にして受け入れようとしてしまっていた私自身だ。思い出したら、恥ずかしさでまた泣けてくる。 …何でこんな酷い嫌がらせ、受けないといけないの?表立ってからかってくれた方が、まだマシだ。 ただ一つ、「私も好き」って返してしまう前で、本当に良かったってそれだけは安堵した。明日、教室で何か言われても「最初から嘘って分かってた」って突き通せば良い。 きっと今頃、走って逃げた私を皆で笑ってるんだ。 相沢なんか…もう本当に知らない。 ーー 次の日、意を決して学校へ向かった私はまた肩透かしを食らった。相沢も、その友達も、誰も昨日のことには触れてこない。この前と同じように、何事もなかったかのように普通だった。 あの後どんなに頑張って冷やしても少し赤みの残ってしまった目元。それを隠すように、下を向いて一日過ごした。 相沢は話しかけてこないし、からかってもこない。私も、もう彼の方は見ないようにした。ちょっとでも視界に入ってしまえば、胸がズキズキ痛んで、また目が熱くなるから。 …何で私が、こんな気持ちにならなくちゃいけないんだろう。 好きでもなんでもなかったはずなのに、フラれたみたいな胸の痛み。 そんな自分が、また惨めに思えて泣けてくる。
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