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「私ね?ずっと羨ましかったんだ、相沢が」
視線を下にズラして、相沢の顔を見ないようにする。
「堂々としてて、言いたいこと言えて、誰にもビクビクしてなくて、私とは正反対」
隣の席の…ううん、それより前からずっと。私は相沢に、憧れみたいなものを確かに感じてた。
周りなんて少しも気にしてないって、その振る舞いに。
「…だけど、そうじゃなかったんだね」
相沢だって、私と同じ。この狭い世界の中で、自分の居場所を失っては生きていけない。
「あの時は、逃げてごめん。今日、ちゃんと話してくれて嬉しかった」
「相田、」
「最後にちゃんと、相沢の気持ちが聞けて嬉しかったよ」
わざと、相沢の言葉を遮った。彼がもっと何かを言おうとしてることに、私は気付いてる。そして多分、その内容も。
だけどそれを、私は聞けない。
「…分かった」
眉尻を下げた相沢は、そのまま制服のポケットに手を突っ込んで私から視線を外した。
「マジ、悪かったな今まで」
「私も、ごめんね」
「…別に」
相沢の切なそうな顔に、今すぐ答えを変えたくなった。ごめんを撤回して、これからも会いたいって言いたくて堪らなくなった。
だけと私は、弱くて狡い。明らかに釣り合ってない私と相沢、例え卒業したとしても周りから何を言われるかは簡単に想像が付く。
もし相沢と付き合えることになったとしても、上手くいくとは思えなかった。
相沢が悪いんじゃない。私がきっと、耐えられない。
ーー似合ってない
ーーどうしてあんな子と
ーームカつく
そんや風に言われても周りなんて気にしないで、相沢のことだけ見る自信が私にはないから。
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